直腸がんの水先案内人であるジャンクDNAを解析
サイエンス出版部 発行書籍
ダートマウスのガイセル医科大学の研究チームが、直腸がんに関与する遺伝子のオン・オフスイッチを同定した。直腸がんの水先案内人に当たるもので、おそらく新しい治療標的になると考えられる。クオンティタティブ生物医科学研究所長で遺伝子学のThird Century教授であるジェイソン・ムーア博士と、大学院生のリチャード・クーパー・サラリ氏とは、ケース・ウエスタン・リザーブ大学とクリーブランド・クリニックが組織する研究チームの一員である。研究成果はサイエンス誌のオンライン版であるサイエンス・エクスプレス2012年4月12日号に発表された。 多くのがんの研究はがんを引き起こす遺伝子の変異の探索を目的としているが、ムーア博士等は、所謂「ジャンクDNA」と呼ばれる、タンパクをコードしないDNA領域を解析した。長い間見落とされて来たのだが、ジャンクDNA領域は、遺伝子の発現自体を制御する機能を有するということで、近年注目されるようになってきている。「我々は、一体何がどのように“ジャンク”だと言われてきたのかを確定しようとしているのです。所謂“遺伝子”といわれる領域と領域の間にある“ジャンク”の領域がどうであるのかということです。」とムーア博士は語る。 遺伝子領域から遠く離れた非コード領域に結合するタンパク類が、その遺伝子領域のオン・オフを制御していると同博士は説明する。9つの直腸がん検体と3つの健康体直腸組織とを用いて、特定の非コードDNA領域が解析された。そして、ある特定の部分が、直腸がんの発症の有無に応じて、非コード領域の差異が見つかったのである。研究チームはこれらの領域を「変異促進遺伝子座(VELs)」と名付けた。クーパー・サラリ氏によれば、彼らが発見したパターンは既存の直腸がん遺伝子発現マーカーのどれよりも、明白にがんの発現を示すという。「とても明白なシグナルが得られます。」
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