アフリカ睡眠病の原虫を人体の免疫系が攻撃しやすくする方法を発見
サイエンス出版部 発行書籍
ある種の感染症は免疫系から逃れる機能を持っているため、治療が特に難しい。その一つに、ツェツェバエに媒介される原虫、ブルース・トリパノソーマを病原体とするアフリカ睡眠病があり、治療せずに放置すると死に至る。このトリパノソーマ原虫は、ツェツェバエから哺乳動物に入り込み、やがて脳などの主要器官に侵入、睡眠サイクルを妨げるなどの症状を引き起こす。 このトリパノソーマはその生活段階で様々な形態を取ることが知られており、ハエの体内にいる時はプロサイクリンというタンパク質に覆われている。ところが、いったん哺乳動物の血流に入ると、この原虫は表面を糖タンパク質の層で覆い、この糖タンパク質層を常に変化させることで特定糖タンパク質を抗原と認識する免疫系の攻撃を逃れる。New York CityのRockefeller UniversityにあるNina Papavasiliou, Ph.D.と、ノーベル賞受賞者、Günter Blobel's (M.D., Ph.D.) の研究室のポスドク研究員、Dr. Danae SchulzとDr. Erik Deblerの新しい研究で、哺乳動物の血流中のトリパノソーマを操り、ツェツェバエ体内での形態に固定することで、侵入してきた異物として人体の免疫系が攻撃しやすくする方法を発見した。 この研究で、クロマチンと作用する特定のタンパク質、つまり、細胞の遺伝情報を包んでいるDNAとタンパク質の大部分を阻害することで、トリパノソーマをだまし、その生活環の人間の血流ではなくツェツェバエ体内にあると錯覚させ、それに合わせた形態に分化させることができた。この研究論文は、2015年12月8日付オープン・アクセス・ジャーナルのPLOS Biologyに掲載され、「Bromodomain Proteins Contribute to Maintenance of Bloo
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