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CRISPRがワイン畑を枯死させる害虫(Glassy-Winged Sharpshooter)駆除に新たな希望をもたらす

CRISPRがワイン畑を枯死させる害虫(Glassy-Winged Sharpshooter)駆除に新たな希望をもたらす

カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の科学者らは、ブドウ園にとって致命的な脅威であるグラッシーウィングシャープシューターを殺虫剤への抵抗力が強まる中、根絶することに成功した。この虫はブドウの木を食べ、ピアス病の原因となる細菌を媒介する。一度感染すると、3年以内にブドウの木が枯れる可能性が高く、580億ドル規模のカリフォルニアのワイン産業にとって大きな問題である。現在、この害虫は防疫と効果の低い薬剤散布によってのみ防除が可能だ。しかし、新しい遺伝子編集技術が、このシャープシューターの駆除に新たな希望をもたらした。UCRの科学者らは、この技術によってこの昆虫に永久的な物理的変化を与えることができることを実証した。また、これらの変化が3世代以上の昆虫に受け継がれることも示した。
このチームの仕事を説明した論文は、2020年4月19日のScientific Reportsに掲載され「CRISPR/Cas9によるGlassy-Winged Sharpshooter Homalodisca vitripennis (Germar)の効率的なゲノム改変(Efficient CRISPR/Cas9-Mediated Genome Modification of the Glassy-Winged Sharpshooter Homalodisca vitripennis (Germar))」 と題されている。

UCRの昆虫学者で論文の共著者であるピーター・アトキンソン博士は、「我々のチームは、グラッシーウィングシャープシューターを制御するための遺伝的アプローチを初めて確立した」と述べている。
このプロジェクトで研究者らは、CRISPR技術を使って、シャープシューターの目の色を制御する遺伝子をノックアウトした。ある実験では、この昆虫の目を白色にした。また、別の実験では、目が血のように赤い朱色に変化した。そして、この目の色の変化は永久的で、改変した親の子孫に受け継がれることを実証した。
CRISPRは、バクテリアの免疫システムをベースにしている。ウイルスに攻撃されたとき、細菌は侵入者からDNAの断片を保存しておく。ウイルスが戻ってくると、細菌はウイルスのDNAを認識し、切断し、破壊する。
科学者らは、CRISPRを「分子のハサミ」のように使って、特定のDNA配列に狙いを定めている。
UCRの昆虫学者で研究の筆頭著者であるイナイアラ・デ・ソウザ・パチェコ博士は、「これは、ある昆虫に非常に特異的であり、他の昆虫、動物、人間に標的外の影響を及ぼさないという点で素晴らしい技術だ。化学薬品を使うよりもずっと環境に優しい昆虫駆除戦略だ。」と語っている。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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