複雑な2型糖尿病や肥満の症状の解明

2014.12.03
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ASHG 2014年年次会議でのプレゼンテーションの一つに、2型糖尿病や肥満という複雑な身体症状を、それらを引き起こす特定の代謝タンパクや代謝活動にまで還元することで、新しい方向からこれらの症状に関連する遺伝子やその相互関係を研究する道が開けることが提示された。筆頭著者を務めたThe University of Texas Health Science Center at Houston (UT Health) School of Public HealthのJennifer E. Below, Ph.D.は、「そのような症状を引き起こす特定のタンパク質やそのタンパク質をエンコードしている遺伝子を研究することで、正しく機能しない代謝過程を直接標的とする新薬を開発することができる」と説明している。

 

Dr. Belowは、「事実、タンパク質レベルで同じ過程に影響を与えるような遺伝子が相乗りで複数の特質に影響していることもある」と述べている。Baylor College of Medicine、Harvard Medical School、University of Chicagoの研究者と共同研究するDr. Belowは、たとえば人体の日周期を調整する遺伝子は眠りの質を左右しているが同時に糖尿病のリスクにもかかわっていることを突き止めた。同じように、免疫系機能や細胞間の相互作用にかかわっているタンパク質のグループは心臓の健康にもかかわっていることも突き止められている。Dr. Belowは、「このような発見は、各解析結果を個々に切り離して取り扱うのではなく遺伝子の影響をグループとして捉える重要さを示している。特質は孤立して現れるものではなく、互いにつながっており、影響し合っている。遺伝子解析でそのことを認識しておく利点は大きい」と述べている。

研究チームは、テキサス州Starr Countyの住民を対象に研究した。この地域社会の住民の肥満と2型糖尿病の罹患率の高さはアメリカ国内の他の地域に比べてほぼ30年ほど先行し続けている。チームはStarr Countyの1,400人を超える住民のゲノムのシーケンシングを実施し、体重、睡眠パターン、心臓の健康、眼の健康、免疫機能、脂肪レベル、血圧など、肥満や糖尿病を引き起こしやすい特質の間の関係を調べた。

その結果、この特質同士がどのように影響し合うかなど、生活様式や環境などの要因を細かく分類できた。Dr. Belowは、「この何十年間かで肥満と糖尿病の率がすさまじい勢いで伸びている。その期間にStarr Countyの住民の遺伝子構成は変わっていないことが分かっているが、何が起きているのかを突き止めるには遺伝子を調べるのが最善であることに変わりはない。肥満と糖尿病を詳細な特質や遺伝子シーケンス・データに還元することで治療の可能性も考えられる」と述べている。Dr. Belowと同僚研究者は、将来的には、家族単位の遺伝子解析に取り組み、発生率の低い遺伝子変異が特定家族では人口一般でよりも頻繁に起きており、それが疾患に大きな影響を与えている可能性を研究テーマとして計画している。Dr. Belowは、「Starr Counyの住民は私たちの研究に非常に協力的だ。おかげでこの発生率は低くとも影響の大きい遺伝子突然変異の健康に対する影響を歳月と世代を縦断して追跡することができる」と述べている。その他にも、肥満や糖尿病以外にもこのまれな遺伝子変異が代謝過程に影響を及ぼしていないかという問題を、Starr Countyの特定家族と人口一般との間で比較研究することが計画されている。

たとえば、研究チームは、特定の眼疾患にかかわっているタンパク質とプロセスを詳しく調べてきており、今後は家族解析と遺伝パターンにまで拡げることを考えている。 2015年ASHG年次会議は、10月6日より10日までメリーランド州ボルティモア市で開かれる予定。

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Michael D. O'Neill
APEX Award Winner
Edited by

Michael D. O'Neill

サイエンスライターとして30年以上の経験を持つ独立系科学ニュース編集者。世界160カ国以上に読者を持つ「バイオクイックニュース」を通じ、生命科学・医学研究の最前線をタイムリーに発信しています。