PMWC 2018:2日目のハイライトは液相生検とCancer Commonsのプレゼン

2018.03.01
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2018年Precision Medicine World Conference (PMWC) 2日目午後の部会では、コース2「Liquid Biopsy Showcase (液相生検ショーケース)」でさらにいくつかの講演が行われた。
最初にBio-Rad Laborartories, Digital Biology CenterのDirector of Scientific Affairsを務めるGeorge Karlin-Neumann, PhDが演壇に立った。Bio-Rad社で、Dr. Karlin-Neumannは、特にがん液相生検の分野で、コラボレーションや内部研究プログラムを通して、ドロップレット・デジタルPCRの研究と臨床実用化の推進を支援している。

 

Dr. Karlin-Neumannは、ドロップレット・デジタルPCRの利点として、絶対定量、高精度、高感度、高スループット、PCR効率バイアス消去などがあると指摘している。
次にはBoreal Genomics社のPresidentとCEOを兼任し、さらにUniversity of British ColumbiaのProfessorも務めるAndre Marziali, PhDが講演に立った。Boreal社でのDr. MarzialiとR&Dチームは、液相生検アッセイのコストを引き下げる高精度次世代シーケンシング・ライブラリー前処理技術の手法に関する19件の特許を持っている。Dr. Marzialiは、Boreal社のOnTarget Circulating Tumor DNA (ctDNA) Analysis [オンターゲット循環腫瘍DNA (ctDNA) 解析] 技術について強調した。依頼者は、100種までの突然変異の設定済みパネルか、カスタム・パネルかの選択が可能で、血漿、FFPEおよび新鮮な冷凍組織、またはDNAサンプルを提出し、0.01%以上の濃度で突然変異の定量化報告を受け取ることができる。OnTargetサービスは研究用途のみに限っており、診断用途には行っていない。
次のプレゼンテーションは、CellMax Life社のPresidentとCEOとを兼任するAtul Sharan氏が行った。Sharanはエンジニアの訓練を受けており、これまでの経歴としてAutoESLのPresident兼CEOやClear Shape Technologiesを創設、PresidentとCEOとの兼任などがある。Sharanは、妻が乳房撮影検査で乳がんはないと診断された何週間か後の追加検査で乳がんと診断されたことからCellMax Life社を創設した。Sharanの妻は今は健康だが、その経験に加えてがんに関する知識も蓄えており、がんの早期発見が何よりも重要だと考えるようになった。早期発見は早期治療に結びつき、治療が成功する確率も非常に高くなる。CellMax Life社は廉価ながん早期発見血液検査法を全世界に提供することを目的としている。同社は、独自のプラットフォームのマイクロ流体チップ、抗体、画像ソフトウエアの開発を済ませており、Sharanは、CellMax社が、これらの開発商品をによって、非常にまれなCTCを前がん状態またはがん治療成功率が高い初期患者で発見するというきわめて難しい問題を克服できる唯一の企業になることと信じている。CellMaxのプラットフォームでCTCを捕捉すれば、同社の技術で臨床に必要なDNA、RNA、タンパク質発現、メチル化などのバイオマーカーを総合的に解析することができる。CellMaxのプラットフォームは、がんの早期発見のために循環腫瘍DNA (ctDNA) の捕捉と解析に用いることができる。Sharanは、CellMaxのアッセイを使って大腸がん検診でCTCを検出するという台湾での研究の結果を伝える2018年1月16日付

ASCOのプレス・リリース についても語った。その検診では無病正診率値が97.3%という数字を出しており、偽陽性の結果を出す確率は3%未満ときわめて低い成績だった。また、前がん患部のCTC検出の有病正診率は77%、がんの第Iステージから第IVステージまででは87%に達している。研究チームはさらに結果の精度も計算した。この計算には有病正診率と無病正診率が計算に加えられ、その結果、検査の精度は前がんとがんのサンプルで84%から88%までと高い範囲に収まっていた。さらに、この検査の精度は、便潜血検査 (FOBT) の精度よりも優れていた。この検査の実施コストについて、この研究論文の共著者で、メリーランド州ボルティモア市のJohns Hopkins University, Center for Bioengineering Innovation and Designのgastroenterologistで、Medical Directorを務めるAshish Nimgaonkar, MDは、「いくつかの調査で、がん検診を受けない人のもっとも大きな理由が検査料金だということが明らかになっている。しかし、この検査法は非常に低料金で$100未満になることもありえる」と語っている。ただし、結腸内視鏡はもっとも確実な診断法であり、患者がCTC検査で陽性だった場合には腫瘍やポリープのサンプル採取のために今後も必要とされるだろうと語っている。現在、台湾の研究論文の著者は、台湾国内の一般人口を対象にしたCTC検査の検証とアメリカでの研究を計画している。論文著者によると、この研究で採用されている技術は、乳がん、肺がん、前立腺がんなど他の種類の固形がんにも適用できる可能性がある。


PHIL FEBBO, GENOMIC HEALTH
次に、Genomic Health社のCMOを務めるPhil Febbo, MDが講演に立った。Dr. Febboは、UCSFで主導的な立場にあったが、Genomic Health社でもリーダーを務めている。UCSFでは、UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのProstate Cancer Programで共同リーダーを務めたことがあり、Alliance for Clinical Trials in OncologyのTranslational Research Programでは、Program Principal Investigatorを務めた。Genomic Health社の使命は、臨床的にアクショナブルな診断とサービスを提供し、がん治療法の判断と結果を大きく変えていくことにある。同社は、初期がんの過剰治療の抑制と治療最適化の実現を目指して、ゲノミクス・ベースの診断テストの分野で世界をリードする企業と自負している。同社のOncotype DXブランドの乳がん、大腸がん、前立腺がんテスト商品は先進的なゲノム学を応用し、がん治療判断を最適化するために患者のがんの固有な生物学的情報を明らかにするものであり、これまでの慣行を変える内容のテスト法により、初期がんについて、その侵攻性の程度や適切な治療法など重要な疑問に答えることで、医師や患者が個別症例に合わせて適切な時に適切な治療を選択する支援をするものである。このようにして、Oncotype DXテストは、患者や医師ががん治療とその結果を最適化するために支援し、患者にとっては不要な施術や治療を避け、医療制度にとっては何十億ドルという額の不要な負担を軽減することができる。すでにGenomic Health’s Oncotype DXテストは世界の90を超える国で85万人以上の患者をテストした実績があり、ゲノミクスをがんの診断と治療の重要な一部として繰り込むことで精密医療のケア標準の編成に役立ってきた。
Genomic Health社の新Oncotype SEQ Liquid Selectは、肺がん、乳がん、大腸がん、皮膚がん、卵巣がん、消化管間質腫瘍 (GIST) などステージIV固形腫瘍タイプのがん患者の個別化治療を支援するために、次世代シーケンシング技術を使って17種の特定遺伝子のアクショナブルなゲノム異常を判定し、評価する液相生検変異解析パネルである。Oncotype SEQは臨床的にアクショナブルな血液ベースのパネルであり、アメリカで毎年35万人を超える再発がん患者や進行期がん患者の標的治療選択のための判断情報を提供し、がん専門医のニーズを満たすよう設計されている。
このテストは、特定ゲノムがんマーカーに基づいて特定ゲノム変異を検出し、医師や患者の治療法選択の判断を支援することを目的に開発された。ゲノムがんマーカーは、National Comprehensive Cancer Network (NCCN®) ガイドラインに含まれているか、該当FDA認可療法への感受性または抵抗性を持つか、現在募集中のPhase II-IV 臨床試験参加資格として確定しているかなどの条件で決められている。Oncotype SEQは、社内での分析的なバリデーション研究で優れた成績を収め、現在はFDAのCLIAに基づいて市販化されている。分析的バリデーション研究結果は、主要医学会議でプレゼンテーションされている。加えて、同社は、償還の追加証拠固めとして臨床一致性調査も始めている。同社は、地域医療専門家との強い信頼関係など、同社の世界水準の流通経路を通して分子レベルのテスト商品を臨床現場にまで送り届けるという他の追随を許さない経験に加え、同社が臨床的有用性の実証と価値ベース・テストで償還を受けることに熟練していることから、液相生検という先端分野に大きな影響を与える立場にあると信じている。


RICHARD WILLIAMS, GRAIL
次には、GRAIL社のGroup Medical Director、Richard Williams, PhDが演壇に立った。Dr. Williamsは、GRAIL社の循環無細胞ゲノム・アトラス (CCGA) 研究のプロジェクト・リーダーを務めている。この研究は、GRAIL社の「高強度」 (超広範囲かつ超深度の) シーケンシング・アプローチを採用し、数千人のがん患者と何千人もの健康な非がん参加者の無細胞核酸プロファイルの全景を特徴づける作業である。GRAIL社は、初期がんを症状が現れるより前に高い信頼性で検出できれば、世界のがん死を大幅に減らせる可能性があると信じている。Dr. Williamsは、GRAIL社が、今年後半にも香港で、鼻咽頭がん (NPC) 早期診断のための無細胞DNAベース・アッセイを発表する予定であることを明らかにした。NPCは、アメリカ (10万人中4人) よりも、アジア (10万人中35人) ではるかに発生率の高いがんである。


MARTY TENENBAUM, CANCER COMMONS
コース1 「Artificial Intelligence in Precision Medicine (精密医療における人工知能)」 の午後遅くには、Cancer Commonsの創設者であり、Chairmanを務めるMarty Tenenbaum (写真), PhDが、「How AI Will Cure Cancer (AIがどのようにがんを治療するか)」との表題でプレゼンテーションを行った。Dr. Tenenbaumは、著名なコンピュータ・サイエンティストにしてインターネット起業家であり、またがんサバイバーでもある。また、Cancer Commonsの創設者であり、現在はChairmanを務めている。Cancer Commonsは、医療専門家、研究者、患者の非営利ネットワークであり、Newsweek誌が、「がん界のLinkedIn」と呼んでいる。
また、Dr. Tenenbaumは、CommerceNetとEfficient FinanceのDirectorも務めている。Cancer Commons は、個別患者のがんについて最善の治療選択肢を見つけるために患者、医師、研究者が協力し合う患者中心の非営利ネットワークである。メンバーは、既往歴、治療の病識と理論的説明、臨床試験、患者の治療結果と経験などの独自でダイナミックな知識ベースに情報を加え、またそこから情報を引き出すことができる。各症例がこの知識の集合体に積み上げられ、次の患者にとってはさらに正確な個別化した選択肢を実現することが可能になる。 Dr. Tenenbaumは、このようにして互いに患者から学習し合うことで現在ある治療法を臨床試験だけの場合よりもさらに効果的に拡張し、最適化することができるのではないか、また、進行がんの患者の治療も急速に改善できるのではないかと考えている。Cancer Commonsは、優れた医師、molecular tumor boards、がん研究者、コンピュータ・サイエンティストらが互いの専門分野の能力と資源を活用するためのネットワークを促進し、全世界がデータと知識を共有できるよう図っている。Commonsは、トップ・クラスの専門家や同じタイプの患者から得られた適切な知識を提供することで、患者や介護者がより良い、より詳しい情報に基づいた治療を選べるように支援している。Cancer Commonsは、患者の臨床治療結果と最新の研究結果に基づいて、世界中のがんに関する情報の集積を常に検証し、洗練させる作業を続けている。


Dr. Tenenbaumが、Cancer Commonsをユニークな存在と考える理由は、分子医学の時代にあっては、進行がんは、何千という遺伝子変異が何万という臨床的に異なるサブタイプをつくる可能性を持つことが特徴となるためである。さらに、何百種もの認可済み治療法がありながら、すべてを並べてテストしたこともなければ組み合わせてテストしたこともない。通常の臨床試験では、このような膨大な組み合わせの空間を効率的に検索することはできない。
決定打となる臨床研究がない以上、現在の患者を支援する最善の道は、現在のトップ・クラスの臨床医の見識、洞察、経験といったものを集合し、検証することである。Cancer Commonsは、世界のトップ・クラスのセンターで研究新薬やそのカクテルで治療を受ける患者のユニークな経験を捉え、従来の臨床試験よりもはるかに効率的に、がん関係者全員の学習を可能にし、類似の患者ならどこにいても最高の治療を受けられるようにすることを目指している。Cancer Commonsは、医療機関の間でもがん治療やその結果は幅広い違いがあり、最善の医療機関から学び、その知識を適切な時に適切な患者や医師に伝えることで、たとえ画期的な新薬がなくとも大勢の生命を救えると考えるようになった。
Dr. Tenenbaumは、がんと関わる人々同士を結びつけ、てこ入れすることに専念するCancer Commonsのような患者本位の非営利機関だけが、医療機関の間に広く見られるデータ共有や協力関係に対する反感を克服する希望を持つことができると信じている。

(写真提供: Rosalyn Lee, PMWC).

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Michael D. O'Neill
APEX Award Winner
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Michael D. O'Neill

サイエンスライターとして30年以上の経験を持つ独立系科学ニュース編集者。世界160カ国以上に読者を持つ「バイオクイックニュース」を通じ、生命科学・医学研究の最前線をタイムリーに発信しています。