発見困難な染色体異常を検知する新しい方法を用いて、自閉症と関連付けられている33の遺伝子が同定された。内、22は初めて発見されたものである。さらにこれらの遺伝子の内複数は、統合失調症などの精神疾患患者において変化すると見られている。このような疾患の症状は思春期や成人期に出る事が多いのである。本研究は複数の研究チームによって行われ、研究結果は2012年4月19日付けのCell誌にオンライン掲載された。

 

「自閉症を含む神経発達障害を持つ子供は、染色体異常があると知られています。我々は彼らのゲノムをシーケンシングすることによって、DNA鎖がどのポイントで分裂し、セグメント交換が起こる箇所が、染色体内または染色体間なのかを正確に特定することが出来ました。結果、これらの疾患に対して個々で強力な影響を与える一連の遺伝子を発見することが出来ました。


また、これらの遺伝子は重度知的障害から成人統合失調症まで、多様な臨床症例に関与していることも分かりました。よって、これらの遺伝子は微妙なパータベーションに非常に敏感であると結論付けられます。」と、マサチューセッツ総合病院人類遺伝学研究センター(MGH CHGR)責任者およびCell誌の責任著者、ジェームス・グセラ(Ph.D.)博士は語る。神経発達障害を持つ子供を診る医師は、彼らの染色体を調べるための検査を行うことが多々ある。これらのテストは染色体組織の著しい異常を検出することは出来るが、障害されている特定の遺伝子を同定することはほぼ不可能である。

バランス染色体異常(BCAs)と呼ばれる構造的変異では、DNAが同じ染色体上の異なる位置に移動されるが、染色体全体のサイズは変わらない。BCAsは、対照集団よりも自閉症スペクトラム障害を持つ個人において、より一般的であることが知られている。グセラ博士とBrigham and Women's病院のシンシア・モートン(Ph.D.)博士は数年前、BCAsを研究し、発達において重要な遺伝子を同定するためにDevelopmental Genome Anatomy(発達ゲノム解剖学)プロジェクトを始動した。しかし染色体の特定のブレイクポイントを識別することは非常に時間のかかる、骨の折れる仕事であった。自閉症に対するBCAsの可能な影響を明らかにするため、研究チームはCell誌の責任著者、MGH CHGRのマイケル・タルコスキー博士(Ph.D.)が開発した新しいアプローチを利用した。この方法は個人のゲノム全体をシーケンシングし、BCAsのブレイクポイントを検出することが可能なのである。従来必要であった数ヶ月という期間と比べて、この手順は全体で2週間足らずで行うことが出来る。

自閉症またはその他の神経発達障害と診断された個人38人のゲノムをスクリーニングした所、33の遺伝子を乱す非タンパク質コード領域で、染色体ブレイクポイントおよび再編成が発見された。内、これらの疾患との関連性を疑われていたのは11であった。本結果をまとめた研究チームは、BCAによって乱された遺伝子の、今まで精神疾患と関連付けられていた数に驚愕した。研究チームはMGH CHGRのマーク・デイリー博士(Ph.D.)と共に、統合失調症では最大であるゲノムワイドな関連研究のデータを調べた。本研究で同定された、BCAにより乱れた遺伝子のかなりの数は、より一般的で微かな変異によって変化した時に統合失調症と関連していることが判明した。

「統合失調症が神経発達障害であるという仮説が長い間立っていましたが、我々はやっと、その説をサポートすることが出来る遺伝的基盤を明らかにし始めたところです。また、異なる遺伝子変異―削除、複製、または不活化–でも非常によく似た影響を出すにも関わらず、同位置で起こる二つの似た様な変化が異なる神経発達症状の原因であることも分かりました。我々は、自閉症およびその他の神経発達障害の遺伝的原因は多様な遺伝子が関与している複雑なものであると考えます。そして、我々のデータはこの考えをサポートしているのです。」と、タルコスキー博士は語る。「正常な脳発生には多数の遺伝子および経路が必要であり、いくつかのパータベーションにより多種多様な発達または神経状態が起こることを我々の研究結果は示唆しており、さらなる研究が行われることは必須でしょう。我々はこれらの遺伝子異常がどのようにして他の遺伝子および経路に影響を及ぼし、またこのような再編成が一般集団においてどれだけ蔓延しているのかを研究することを期待しています。本研究は神経発達障害および精神疾患の遺伝子基盤を理解し、新たな臨床治療法を開発するための最初の一歩なのです。」と、ハーバード医学学校神経遺伝学教授、グセラ博士は説明する。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:New Sequencing Approach Reveals 22 New Genes for Autism and Related Disorders

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