2017年10月9日、ASEMV(American Society for Exosomes and Microvesicles) 年次大会の2日目、Harvard Univesityの1年生、Indrani Dasさん (18) が自身のエキソソーム研究を発表し、200名の名声のある研究者達を釘付けにした。この研究にはRegeneron 2017 United States Science Talent Search Grand Prizeと賞金$250,000が贈られている。

 

この賞自体、高校上級生を対象とする科学数学のコンペティションとしてアメリカでもっとも歴史が古く、またもっとも栄誉とされる賞であり、過去にはWestinghouse社やIntel社もスポンサーを務めたことがある。写真は受賞当日のIndraniさん。
 
アシロマーでのIndraniさんのプレゼンテーションに対して研究者達は「素晴らしい」、「パワフル」、「信じられない」など最高級の賛辞を口にしている。彼女の受賞研究は、「Exosomal MicroRNA-124s: Novel Translational Reactive Astrocyte Repair in Vitro (エキソソーム由来のMicroRNA-124: 反応性アストロサイトの新しいトランスレーショナルなin vitro修復法)」と題されている。


当初、Indraniは神経変性疾患や脳外傷の治療に関心を持っていたが、その際にエキソソームと呼ばれる小胞が血液脳関門を通り抜けることとこの小胞で脳外傷の部位にまで医薬を運べる可能性を知り、高校で4年間にわたりエキソソームを研究するきっかけになった。また、脳卒中、脳外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病などがいずれもグリア細胞の動きを極端に変化させること、特に反応性アストログリオーシスと呼ばれる現象を引き起こすことを知った。健康なアストロサイトは必須興奮性神経伝達物質のグルタミン酸塩を周辺から吸収するが、反応性アストログリオーシスではこのプロセスが壊れていて、グルタミン酸塩が細胞外の部分に蓄積し、そのために周辺のニューロンに損傷を与えることになる。実際、ニューロンを反応性アストロサイトが増殖した培地に入れるとニューロンは死滅してしまう。
 
Indraniさんは、興奮性アミノ酸輸送体EAAT2がアストロサイト内で発現される主要グルタミン酸塩輸送体の一つであり、グルタミン酸塩吸収総量の90%がこのEAAT2によるものと知った。そこで、まずEAAT2の減少が、反応性アストロサイトのグルタミン酸塩吸収が減る原因ではないかという仮説を立てた。ところが実験してみるとアストロサイトでもEAAT2の発現は変化がなかった。さらに、その実験で反応性アストロサイトの細胞膜に局在していたEAAT2が細胞膜から離れることが示された。そのため、Indraniさんは、EAAT2が細胞膜から離れるために周囲の培地にグルタミン酸塩が蓄積する結果になるのかも知れないと考えた。そこで、microRNA-124aを加えられたアストロサイトから分離したエキソソームを用いてEAAT2発現を増加させ、反応性アストロサイトのグルタミン酸塩吸収を向上させた。また、この変化がニューロンの生存率の向上に関わっているようだった。
 
Indraniさんは、エキソソーム処理でEAAT2が細胞膜に再局在化するようになるのではないかと疑っているが、まだ実証していない。Indraniさんは、将来の研究ではアストロサイト内でmiRNA-124aがEAAT2の発現を調整する仕組みの解明を重点にすべきだと考えている。Indraniさんのこの受賞研究はニュージャージー州Hackensack Bergen County Academiesで行われ、Mrs. Donna Leonardiが指導した。


BioQuick News:18-Year-Old Harvard Freshman Electrifies Scientists on Second Day of American Society for Exosomes and Microvesicles (ASEMV) 2017 Annual Meeting in Asilomar, California
 

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