認知症を患う人の数は世界で5,500万人と推定されており、この数は高齢化社会の到来とともに増加すると予想されている。認知症の進行を遅らせたり、止めたりする治療法を見つけるには、認知症を引き起こす要因についてより深く理解する必要がある。タフツ大学の研究者らは、認知機能の低下の程度が異なる成人の脳組織におけるビタミンD濃度を調べた初めての研究を完了した。その結果、脳内のビタミンD濃度が高い人ほど、認知機能が優れていることが分かった。
このオープンアクセス論文は、2022年12月7日にアルツハイマー病協会誌Alzheimer's & Dementiaに掲載され、「地域在住の高齢者における脳内ビタミンD群と認知機能低下および神経病理学的変化(Brain Vitamin D Forms, Cognitive Decline, and Neuropathology in Community-Dwelling Older Adults)」と題されている。

タフツ大学Jean Mayer USDA Human Nutrition Research Center on Aging(HNRCA)所長で、HNRCAビタミンKチームの主任研究員であるサラ・ブース博士は、「この研究は、アルツハイマー病やその他の認知症のような疾患から加齢脳を守るために、食物や栄養素でどのように回復力を生み出すかを研究することの重要性を補強するのもだ」と述べている。ビタミンDは、免疫反応や健康な骨の維持など、体内の多くの機能をサポートしている。食事では、脂肪分の多い魚や強化飲料(牛乳やオレンジジュースなど)、短時間の日光浴でビタミンDを摂取することができる。

ビタミンKチームの科学者であり、タフツ大学フリードマン栄養科学・政策大学院の准教授である筆頭著者のカイラ・シー博士は、「ビタミンDに関する多くの研究を含め、高齢者の認知パフォーマンスや機能に食事や栄養の要因が関係しているとされているが、それらは全て、食事からの摂取量か血液によるビタミンDの測定に基づいているが、我々は、ビタミンDが脳に存在するかどうか、そして、もし存在するならば、その濃度がどのように認知機能の低下と関連しているかを知りたかったのだ。」と述べている。

ブース博士とシー博士の研究チームは、1997年に始まったアルツハイマー病の長期研究「Rush Memory and Aging Project」の参加者209人の脳組織のサンプルを調査した。ラッシュ大学の研究者らは、認知機能障害の兆候のない高齢者である参加者の加齢に伴う認知機能を評価し、死後の脳組織の不規則性を分析したのである。

タフツ大学の研究では、脳の4つの領域でビタミンDを調べた。2つはアルツハイマー病と関連する変化、1つは血流と関連する認知症、1つはアルツハイマー病や血管疾患と関連する認知機能の低下と関連がない領域であった。その結果、ビタミンDは脳組織に確かに存在し、脳の4つの領域すべてでビタミンD濃度が高いことが、認知機能の向上と相関していることが分かった。

しかし、脳内のビタミンD濃度は、アミロイド斑の蓄積、レビー小体病、慢性または顕微鏡的な脳卒中の証拠など、研究対象となった脳のアルツハイマー病と関連する生理学的マーカーのいずれとも関連しなかった。つまり、ビタミンDが脳機能にどのような影響を及ぼすのか、まだ正確には分かっていないのである。

「認知症は多因子性であり、その根底にある多くの病理学的メカニズムは十分に解明されていない。ビタミンDは、我々がまだ調べていない将来的に研究する予定のアウトカムに関係している可能性がある。」とシー博士は述べている。

ビタミンDは、人種や民族によっても異なることが知られており、最初のラッシュコホートの参加者のほとんどは白人だった。研究者らは、認知機能の低下に関連する他の脳の変化を調べるため、より多様な被験者グループを使った追跡調査を計画している。研究者らは、ビタミンDが認知症の予防に果たす役割について、より深い理解につながることを期待している。
一方で、専門家は、予防のためにビタミンDのサプリメントを大量に摂取しないよう注意を促している。ビタミンDの推奨摂取量は、1〜70歳の人で600IU、それ以上の人で800IUとされている。

「我々は今、ビタミンDが、人間の脳内に、それなりの量で存在し、認知機能の低下の少なさと相関していることを知っている。しかし、我々は、将来の介入策を設計し始める前に、ビタミンDが脳内で関連する神経病理を特定するために、もっと研究をする必要がある。」と、シー博士は述べている。

[News release] [Alzheimer’s & Dementia article]

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