大きなたんぱく質に対してモノクローナル抗体を作成したときは、その抗体が抗原のどの部分に結合するかを知りたいものです。抗体が結合する抗原の部分構造を抗原決定基あるいはエピトープといいます。たんぱく質(ポリペプチド鎖)が抗原となった場合、エピトープの大きさは数アミノ酸残基ほどとも言われています。

 

これは構成するアミノ酸の種類にも依りますし、隣接部分の状況にも影響されるので、エピトープとなるペプチドのきっちりした長さを示すことは難しいです。
例えば、ポリペプチド末端がエピトープとなっているときは、短くて3残基です。
また、リン酸化チロシンに対する抗体では、周辺の配列に関係なくチロシンがリン酸化されていれば結合するので、1残基ということになります。なお、同じくリン酸化されるトレオニンやセリンについては、これら1残基がリン酸化されたものを識別する抗体を作ること自体が難しく、周辺の配列を含んだエピトープとなります。それでは、モノクローナル抗体がたんぱく質を抗原とするときに、その抗原決定基を絞り込む方法(エピトープマッピング)について簡単に説明しましょう。エピトープマッピングは幾つかの会社が委託解析をおこなっており、ご自分で実験する機会はあまりないと思います。方法は大きく分けて2つあり、合成ペプチドを用いる方法と分子生物学的手法を利用するやり方です。モノクローナル抗体ですから、抗原となるたんぱく質が特定できていない場合もあり、このときはランダムペプチドライブラリーあるいはファージディスプレイを使うことになります。抗原となるたんぱく質が特定されていれば、遺伝子の配列に基づいてオープンリーディングフレーム(ORF)を翻訳し得られる、たんぱく質の一次構造が基本になります。まず、わかりやすい、抗原が特定されている場合です。ORF の配列から数残基〜10残基のペプチドを一部をオーバーラップさせて合成します。

例えば、1〜9、3〜11、6〜14、9〜17、...という具合です。これらをニトロセルロースなどの膜に固定化し、希釈したモノクローナル抗体を加えてインキュベート、洗浄後に結合した抗体を標識二次抗体で検出します。分子生物学的方法では断片化した組換えたんぱく質を発現しイムノブロットなどで調べます。無細胞たんぱく質合成系を使うと実験が迅速化されます。次に不特定な配列を対象とした方法です。ランダム配列のペプチドは、アミノ酸の種類である20(実際にはシステインを除いた19を使うことが多い)を残基数の回数だけ掛け算した数になります。5残基でも250万種類です。最近は、印刷技術を利用して狭い範囲に正確に微量送液することが可能になり、チップに直接ペプチド合成をしたマイクロペプチドアレイが確立しています。

また、抗体は、アフィニティは落ちますが4残基でも結合するので、これでランダムペプチドに対して結合データを取っていきます。分子生物学的手法ではランダム配列をファージの外殻たんぱく質に挿入したファージディスプレイを利用します。ランダム配列の中から得られる抗体結合配列は、ミモトープ(mimotope)と呼ばれ、必ずしもエピトープとは一致しません。これら疑似配列のほうが結合が強いこともあります。エピトープが決定したら必ず検証をします。エピトープのペプチドを一定量混ぜて本来の抗原とモノクローナル抗体との結合反応(例えばイムノブロット)をおこない、エピトープペプチドによる中和を確かめます。

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