抗ペプチド抗体を作ったときは通常、調製した抗血清をカラムにかけて目的の抗体(igG)を精製します。一般的には、抗原に用いたペプチド、あるいは関連ペプチドをアガロースやセルロースのビーズに固定化して、アフィニティーカラムを準備します。

 

抗体と抗原の結合が起こる条件下で、抗血清をカラムにかけると、抗体分子は固定化したペプチドに結合します。抗原抗体の結合が乖離しない範囲のやや強い条件で、カラムを洗浄すると、血清中にあった夾雑物が洗い流され、抗体だけがカラムにトラップされます。十分な洗浄後に、カラム内を抗原と抗体がはずれる環境に変えると抗体が溶出し精製が完了するわけです。

抗原と抗体とが別れるための条件として重要なことは、

①環境を温和な状態に戻せば抗原-抗体の結合力が回復する、

②戻す操作が煩雑でないことの二つです。精製した抗体を何らかの実験に使うため、特に前者は重要です。 抗体の溶出条件について説明します。よく使われる条件は、pHを酸性にすることです。0.1MのGly-HCL,pH 2.5が一般的です。溶出画分をTrisなどで中和すればpHは簡単に調整できます。ここで、表題の消えた抗体の話です。在職中、たくさんの抗体を扱っていた時期で、溶出した抗体は、活性(イムノブロットによる抗原認識活性)だけをチェックしていたことがありました。

精製抗体をイムノブロットに使ったところ、見えるはずのバンドが出てこない。抗体の濃度を上げるとバックグラウンドだけ上がって全体に汚く見えてきます。一見、抗体が消えてしまったような現象ですが、溶出液のigGを定量してみると、ほどほどの濃度あることがわかります。すなわち、抗体が失活した(抗原を認識しなくなった)わけです。 このようなときにどうすれば良いか、他の溶出条件を試してみるしかないです。pHを少し高めにしてみることも一つです。

ただし、同時に溶出もされにくくなるので、条件設定に気をつけてください。

また、酸処理をした後の中和についても、急激にpHを戻さずに段階的にすると抗体活性が回復したという例もあります。結合部位の構造の微妙な巻き戻りなのかもしれません。一定濃度の抗原ペプチドを利用することも選択肢の一つです。中性域のpHでも0.1mM程度のペプチドで競合することがあります。この方法の欠点は、溶出した抗体とペプチドを分けるために透析かゲル濾過をしなければならないことで、ある程度のスケールで抗体精製をする必要があります。ペプチド合成の手間を厭わなければ、配列や長さを少し変えたペプチドを改めて合成し、アフィニティー精製をやってみることも良いかもしれません。最悪の場合、アフィニティー精製せずに、ゲル濾過やイオン交換クロマトグラフィーでigGを調製して実験に使うこともあります。 モノクローナル抗体は酸処理に対して弱いという話をよく聞きます。ポリクローナル抗体はモノクローナルの混ざったものなので、失活しなかった抗体が働いていると考えたほうが正しいかと思います。いずれにせよ、抗体のアフィニティー精製は、溶出時に要注意ということです。

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