これまで、急激に進行する血液のがん、B細胞急性リンパ性白血病 (ALL) にかかった成人には限られた治療法しかなかった。当初の化学療法の後で病気がぶり返すか、再発するのが通常だった。しばしばその段階で患者はそれ以上の化学療法を拒むようになるが、幹細胞移植も、通常疾患が緩解した場合にのみ有効であるため、このような患者には効果が期待できない。

 

しかし、Memorial Sloan-Ketteringの研究チームが、「遺伝子組み換え免疫細胞が、再発B細胞ALLの患者のがん細胞を殺除する有効性が期待できる」との研究報告を出しており、事実、targeted immunotherapyと呼ばれるこの新しい治療法を受けた5人の患者全員が完全に寛解し、がん細胞は検出されていない。現在も続けられている臨床治験の結果は、学術誌「Science Translational Medicine」の2013年3月20日付オンライン版に掲載されている。腫瘍内科医Dr. Renier J. Brentjensと共同してこの研究を指導したMemorial Sloan-Kettering’s Center for Cell EngineeringのDirector、Dr. Michel Sadelainは、「B細胞ALLの患者にとっては非常に明るいニュースであり、”Targeted immunotherapy”の分野でも非常に重要な偉業となるものだ」と述べている。その”Targeted immunotherapy”とは、免疫系に対して、腫瘍細胞を識別し、これを攻撃するよう指示するテクニックである。


過去10年間、Dr. Sadelain、Dr. Brentjensの他、Memorial Sloan-Kettering’s Cell Therapy and Cell Engineering FacilityのDirector、Dr. Isabelle RiviereらMemorial Sloan-Ketteringの研究者、さらに医者で科学者でもあるDr. Marco L. Davilaらは、患者の身体からT細胞と呼ばれる白血球を取り除き、組換えウイルス・ベクターを用いて新しい遺伝子を送り込む方法を探ってきた。ウイルス・ベクターとは、複製機能を停止されたウイルスで、複製ができなくなっているため、効率よく遺伝子の内容を宿主の細胞に運び込むことができるようになっている。

遺伝子が導入され、発現した後、T細胞が患者の身体に戻されて増殖し、がん細胞を攻撃することを目的とした様々な免疫反応を引き起こすことになる。ALLの治療に的を絞った免疫療法で用いられる遺伝子は、T細胞受容体生成のコードを持っており、B細胞ALLに含まれているCD19タンパクを認識することができるようになっている。この技術の研究初期段階では主にMemorial Sloan-Kettering’s Experimental Therapeutics Center とCenter for Cell Engineering後援者の支援を受けてきた。

Dr. Brentjensは、「私たちは、実験室でこの技術を開発する指導的なセンターになっていた。また、ウイルス・ベクターを臨床レベルに持ち込み、CD19を標的とする技術を導入したのもこの研究室が初めてだった」と述べている。この研究の第I相臨床試験段階で、B細胞ALLが再発した患者5人はいずれも血液で様々なレベルのがんが検出された。しかし、5人の患者は、遺伝子組み換えT細胞を移植された後、寛解し、高感度分子解析でもがん細胞の残存は検出されなかった。

Dr. Brentjensは、「化学療法に耐性を持つB細胞ALLが再発した患者の場合にはとりわけ予後が悪かったが、私たちの試みた治療法でそのような重度の患者5人全員が寛解したことはめざましいことであり、今後の展開が期待される」と述べている。治療を受けた5人のうち4人はその後、追加治療として骨髄移植を受けた。がん再発患者が治療を受けて寛解した後、骨髄移植が行われるのはごく標準的な手順である。これまでに4人のうち3人が5か月ないし24か月寛解したままになっている。ただし、患者1人は寛解後、がん治療とは無関係の合併症で死亡している。

Dr. Brentjensは、「B細胞ALLが再発し、化学療法に耐性を持っている成人患者では、幹細胞移植までのつなぎとしてこの治療法が効果を発揮することが考えられるが、そのような措置なしでは現在のところ患者は事実上治療不可能だ。ただし、この治療法が再発B細胞ALL患者治療の標準になるまでには、さらに多くの患者でtargeted immunotherapyの有効性を試験しなければならない」と語っている。

B細胞ALL患者が疾患早期に化学療法と並行して”Targeted immunotherapy”を受けることで何らかの改善があるかどうか、特に疾患初期の最前線治療の一環として、あるいは寛解した後の再発防止処置として有効かどうかを調べるため、第II相試験を含めた臨床試験が予定されている。

この記事は、Memorial Sloan-Kettering 発行のMemorial Sloan-Kettering On Cancerニュース情報向けに編集・著述家Jim Stallard, MAが執筆した。この新治療法とMemorial Sloan-Kettering での患者の体験はNew York Times ストーリーにも掲載されている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Targeted Cell-Based Immune Therapy at Sloan-Kettering Leads to Complete Remission in Five Patients with Deadly Leukemia

この記事の続きは会員限定です