欧州肺癌会議(ELCC 2015)において、国際研究チームが、「肺がん患者の血流に乗って循環するがんDNA (ctDNA)は、医師にとってはがん組織採取が難しい場合にも、重要な突然変異情報を提供し、最大限の治療が可能になる」との研究を発表した。会議において、その研究を発表したドイツのLung Clinic GrosshansdorfのDepartment of Thoracic Oncologyに勤めるDr. Martin Reckは、「この研究結果は、特定のがん細胞突然変異を標的にするがん治療法の有効性に光を当てている」と述べている。
Dr. Reckのプレゼンテーションは、「Investigating the Utility of Circulating-Free Tumor-Derived DNA (ctDNA) in Plasma for the Detection of Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR) Mutation Status in European and Japanese Patients with Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer (ヨーロッパと日本における進行非小胞性肺がんの上皮成長因子受容体 (EGFR) の変異状態判定のための血漿中の無細胞血中循環腫瘍由来DNA (ctDNA) 検出の有用性研究)」と題されている。
検査で、がん組織のこのような突然変異の証拠を必ず見つけられるとは限らないが、患者の血流に乗って循環するがん細胞のDNAがそれに代わる情報を提供する可能性があるとしている。この大規模な国際的ASSESSの研究は、EGFR変異を検出する血液検査とがんそのものを検査する標準的な検査法の能力比較を目的としていた。Dr. Reckは、「私たちは患者に代わって答えを見つけようとしていた。肺がんが気管支鏡検査やCTガイド下生検では見えにくい場合に、EGFR変異を突き止め、よりよい治療を受けられるようにする有効な検査法があるだろうか? と考え、この血液検査の結果が標準的な組織検査の結果と一致するか? と問い続けてきた」と述べている。
この研究全体で組織と血液サンプルのセット1,162件を調べた。2種のテクニックのEGFR検査結果を比較すると、血液検査と組織検査では89%の一致率が見られた。血漿検査では、EGFR変異の患者の約半数を突き止めたが、組織検査では有病正診率は46%だった。この研究の検査は特別な大手中央検査室ではなく、日常的な臨床検査を行う所内検査室で実施した。Dr. Reckは、「そうすることで仮想現実の臨床にはならず、実際の臨床現場を再現できたことは重要だ」と述べている。さらに、「研究の結果、がん組織を検査することができない場合には血漿中のEGFR変異を検査することで患者には特定病変に充分に的を絞った治療を提供することができる魅力がある」と述べている。
この研究について、スペインのバルセロナにあるCatalan Institute of Oncologyに所属し、ESMOの肺がん研究部の専門家でもあるDr. Rafael Rosellは、「がん患者の血流から検出された無細胞状態のDNAは、通常がん組織検査で見つかる遺伝子変異を調べる重要なツールにもなる。これは生検でももっとも驚異的な発見の一つに数えられる」と述べている。さらに、「この研究の結果、血液から抽出した血漿または血清の循環DNA中のEGFR変異の存在も約半数の患者で確認された」と述べている。Dr. Rosellは、「この研究が行われて以降、すでに循環がんDNAのEGFR変異検査の有病正診率が向上してきている。また、この研究は、さらに新しい研究の道を開き、がん患者治療の一環としてEGFR変異などの遺伝子変異検査を通常の手続きとするところまで広げてきた」と述べている。
原著へのリンクは英語版をご覧くださいCirculating Lung Cancer DNA Can Provide Vital “Liquid Biopsy” for EGFR Mutations When Tumor Tissue Is Not Accessible



