朝、目覚まし時計のけたたましい音が無くても目が覚める事について、不思議に思ったことはあるだろうか?ソーク生物学研究所の研究者達が、この疑問を解決するカギとなる生物時計の新しい構成要素を同定した。この要素とは、生物時計を静止状態からスタートする役目を果たす遺伝子である。体内時計は、体が起きるための合図である重要な生理機能を誘導し、毎朝早くから私たちの代謝を高めている。この新しい遺伝子の発見と、この遺伝子が生物時計をスタートさせるメカニズムを解明することによって、不眠や老化、また、癌や糖尿病などの慢性疾患の遺伝的基盤を説明することが可能になるであろう。
「体とはつまり時計の集まりなのです」と、ソーク寄生生物学研究所の准教授であるパンダ・サチンダナンダ博士は言う。パンダ博士はポスドク研究員であるディタッチオ・ルシアーノ博士とともに今回の実験を行った。
「私たちは、夜間に体内時計を緩めるメカニズムは知っていましたが、朝にメカニズムを活性化させるものが何なのかが分かりませんでした。これを発見した今、加齢や慢性疾患につき体内時計が誤作動する方法をより深く研究することが出来ます。」と博士は語る。サイエンス誌に2011年9月30日付けで発表されたオンライン記事によると、ソーク研究者達とその共同研究者であるアギル大学とアルバート・アインシュタイン医学大学の研究者達は、KDM5A遺伝子がJARID1aタンパク質をコード化する方法を説明している。このJARID1aタンパク質は生化学的な回路の活性化スイッチの役目を果たし、私たちの概日リズムを維持する。今回の発見は、これまで空白だったウェイク睡眠サイクルをコントロールする分子メカニズムの関係性を埋める。
体内時計の中心的プレーヤーはPERIOD (PER)とよばれるタンパク質である。それぞれの細胞のPERタンパク質の数は、24時間ごとに上昇と低下を繰り返す。私たちの細胞はPERタンパク質のレベルを一日の時間の指標として使用し、体に睡眠や覚醒の合図を送る。研究者達は、CLOCK と BMAL1という二つの遺伝子がPERタンパク質レベルの上昇を促す最重要要素であることを知っていた。PERタンパク質レベルは日中上昇を続け、夕方にピークに達する。そこでどういうわけかCLOCKとBMAL二つのタンパク質を阻害し、夜間のレベルを低減させる。夜間にPERタンパク質のレベルが低減することによって、私たちの生物学的システムの速度が低下し、血圧が下がり、心拍数が遅くなり、心理過程が遅くなる。しかし、今までは、夜間タンパク量の低減化の正確な性質と、何がCLOCKタンパク質とBMALタンパク質の低減化を止め、PERタンパク質レベルを毎朝上昇させるのかが謎であった。主にソークのイノベーション募金グラントによる彼らの研究で、パンダ博士と研究者達は、酵素の一種であるJARID1aが細胞と臓器に毎朝一斉集合をかけて仕事に戻らせる役割があることを発見した。
ヒトとマウスとショウジョウバエにおける概日リズムの基盤となっている遺伝的メカニズムを研究することによって、研究者達はJARID1aが細胞レベルと生物の毎日の行動での両視点から、通常のサイクリングのために必要であることが分かった。JARID1a生産量が低下するよう、遺伝子組み換えされたヒトとマウスの細胞内では、PERタンパク質は毎日通常のピークに達しなかった。また、同様に遺伝子組み換えされたショウジョウバエでも、PERタンパク質のレベルが低下していた。このハエ達は時間の観念を失った。つまり、睡眠と気象の時間が分からなくなり、昼と夜を通して頻繁に昼寝をとっていたのだ。時計の分子学的働きをさらに深く掘り下げたところ、パンダ博士と研究員たちは、JARID1aが、低減化機能を有するタンパク質HDAC1の作用に対抗して、CLOCK と BMAL1を再活性化していることを明らかにした。このため、PERタンパク質が、HDAC1に夜間においては独自の生産活性を低減化させるように指示している、と彼らは推測している。
「JARID1aがこのブレーキを緩めるように指示をだし、それがCLOCK と BMAL1の毎朝の再活性化を促している」とパンダ博士は説明する。時計の働きについての調査結果をサポートするために、研究者は遺伝子組み換えによってJARID1a遺伝子を欠いたマウスとショウジョウバエの遺伝子学的研究を行った。ハエのDNAにJARID1aを入れ、それによってHDACブレーキがはずれ、ハエは通常のサイクルに戻った。マウスはJARID1aの働きを模倣する薬を投与され、生物時計が通常通り働くようにした。
本研究によって我々が毎朝なぜ目をさますのかが理解され、次は睡眠障害や慢性疾患においてのJARID1aの役割を追求し、新しい治療薬のターゲットとして使用することが出来る。例えば加齢では、体内時計が衰え、高齢者が不眠に苦しむ原因となっているようである。また、正常な目覚めと睡眠の24時間周期から外れるシフト制の交代勤務者、例えばナースや救急隊員は、特定の疾患のリスクがはるかに高くなる。また、体内時計は疾患の促進においても重要な役割を果たしており、これらはほとんどの場合日常的な代謝周期への影響のためである。
成長と癌の両方において細胞の発達と分裂をコントロールする遺伝的メカニズムの正常作動のために、毎日の細胞周期は根本的な役割がある。慢性疾患の1種である糖尿病の細胞メカニズムもまた体内時計によってコントロールされている代謝周期と関連している。たとえば、砂糖から脂肪への転換は、通常では特定の時間帯にしか起こらないが、糖尿病患者の体では終日行われているように見受けられる。これは、体内時計がコントロールを失っていることを示唆している。「健康で若々しくいるための秘訣は、夜の睡眠にあるのです。我々はJARID1aが昼間のサイクルを活性化するのを同定したので、これからなぜ一部の人々の概日リズムが壊れているのかを追求していき、その人々を支援する新しい方法を見つけられるでしょう。」とパンダ博士は語る。
[BioQuick News: “Alarm Clock” Gene Identified ">



