ジェット機の下から荷降ろしされるたくさん詰め込まれたスーツケースのように、 エクソソーム と呼ばれる生物学的小包は、体内のすべての細胞から継続的に展開され、これらを送り出すことによって細胞はタンパク質および遺伝物質を介して互いに通信をする。 単に細胞の「ゴミ」の微小な袋であると考えられていたエクソソームは、今や我々の健康にとって非常に重要なものであると理解されている。
近年の研究では、癌やアルツハイマー病などの神経変性疾患の蔓延に関連した分子を輸送することを示している。 しかし、最近まで、脳の発達におけるエクソソームの役割は謎のままだった。
2019年7月22日にPNASのオンライン発表された新しい研究では、スクリプス研究所のHollis Cline博士(写真)と彼女の同僚は、エクソソームがニューロンや神経回路の発達に不可欠なだけではなく、発達障害の影響を受けた脳細胞の健康を回復することができることを示すことによって知識の溝を埋めようとしている。このオープンアクセスのPNASの論文は、「エクソソームは神経発生と回路構築を調節する(Exosomes Regulate Neurogenesis and Circuit Assembly.)」と題されている。
「脳の発達のさまざまな段階において、細胞間のシグナル伝達が不可欠だ。我々は、エクソソームがこれらのシグナルを伝達する方法の1つであることを見出した。」と、スクリプス研究所の神経科学部門の共同議長であり、スクリプス研究所のDorris Neuroscience Centerのディレクターを務めるCline博士は語った。
私たちの体は細胞内および細胞間で異なる物質を行き来させるために「ベシクル」と呼ばれる球形の容器を使用している。 エクソソームは、さまざまな生物学的積荷(脂質、タンパク質、RNA)を細胞間で輸送することを目的としたベシクルの一種だ。 Cline博士の研究は、特にタンパク質がエクソソームの細胞間シグナル伝達能力に関与していることを明らかにした。
彼女の研究チームは、健康なヒト神経細胞からのエクソソームと、自閉症のような症状を引き起こす遺伝的に発生する発達上の脳障害であるレット症候群の疾患モデルからのエクソソームを調べた。
Cline博士の研究室の神経科学者であるPranav Sharma博士は、健康なニューロンと病気のニューロンからのエクソソームの生物活性を明確に識別し比較するための実験を計画した。 複数の細胞アッセイや機能アッセイにより、レット症候群の影響を受けたエクソソームには有害なタンパク質が含まれていないだけでなく、健康なエクソソームには必須のシグナル伝達タンパク質も含まれていないことが分かった。 「彼らには悪いものは無かったが、良いものも無かった。」とSharma博士は述べた。
実験の一環として、チームはCRISPR遺伝子編集技術を使用してレット症候群の原因となる変異を修正し、その結果、神経エクソソームのシグナル伝達機能が回復したかどうかを調べた。 「変異を修正することで、欠損が解消された」とSharma博士は語った。
彼らはまた、レット症候群の培養皿モデルに健康的なエクソソームを加えることが治療効果をもたらすかどうかをテストし、効果を確認した。
「それはおそらく我々の最もエキサイティングな発見だった:健康な細胞からのエクソソームは確かにレット症候群の細胞の神経発達障害を救うことがでる」とCline博士は述べた。「治療を必要とする多くの神経発達障害のために、これは非常に有望であると我々は考えている。我々がすでにこれらの根底にある遺伝子不全について深い理解を持っているが、それでも疾患それ自体に対処するための治療法を欠いている障害だ。」
Sharma博士によると、この研究はレット症候群の患者の人工多能性幹細胞(iPSC)由来のヒト神経細胞に依存しているという。 実験のこの面について、チームはカリフォルニア大学サンディエゴ校の神経科学および幹細胞のスペシャリストであるAlysson Muotri博士の専門知識を活用した。 エクソソームを特徴付けるために必要とされる豊富で定量化可能なプロテオームデータを得るために、チームは質量分析のパイオニアであるJohn Yates III博士およびDaniel McClatchy博士を含む、スクリプス研究所の数名と協力した。
「脳は非常に複雑な臓器であり、ニューロンは通常の細胞よりも複雑だ。」とSharma博士は語った。 「複雑さに迷いたくなかったので、これらのベシクルの能力と含有量をテストするための還元主義的アプローチを決定した。」
研究者らはまた、健康なエクソソームをマウスの海馬(学習と記憶に関わる脳の領域)に注入し、ニューロンの増殖が増加することを観察した。 研究のこのin vivoの側面は、細胞培養において見られるエクソソーム生物活性が動物モデルでも有効なことを証明した。
Cline博士と彼女のチームは、注目すべき発見を武器に、結果をより深く掘り下げ、エクソソームの生物活性と潜在的な臨床応用に関連した次のような疑問を探求するつもりだ。:血液検査でエクソソームを測定して病気や治療効果を検出することはできるのか? これらの所見は自閉症スペクトラム障害(ASD)や他の神経発達疾患、例えばFragile Xにも当てはまるのか? 将来、エクソソームベースの治療は脳障害を持つ患者に役立つことができるのか?
「この研究は、脳の発達に関連する多くの疾患と大きな関連性がある」とCline博士は語った。 「これは多くの科学者がその可能性に興奮している非常に興味深い生物学だ。」
BioQuick News:Exosomes May Have “Huge Relevance” to Treating & Diagnosing Developmental Brain Disorders; New Work at Scripps Suggests Cellular Cargo Transporters Play Profound Role in Creating Brain Cells & Circuits



