ネズミは約2歳で人間の約80歳に相当する「人生の黄昏期」に達します。研究者がネズミに特定の突然変異を導入し、それらを加齢させると、ネズミは物忘れが悪化し、イライラし始め、最終的には多くの高齢者と似たアルツハイマー病の兆候を示します。最近の研究では、脳の免疫細胞であるミクログリアが、ネズミとヒトの両方でアルツハイマー病が進行するにつれて衰退し、APOE4というアルツハイマー病に関連する重要な遺伝子バリアントがこれらの変化を仲介している可能性があることが示されました。

この新しい研究は、2024年1月9日に「Immunity」誌で「An Exhausted-Like Microglial Population Accumulates in Aged and APOE4 Genotype Alzheimer’s Brains(老化およびAPOE4遺伝子型のアルツハイマー脳に蓄積する疲弊したマイクログリア集団)」というタイトルでオープンアクセス論文として発表されました。

「APOE4バリアントを持つ老齢のネズミは、これらの疲弊し疲労した免疫細胞を脳内に持っており、私たちはヒトのデータセットでも類似の現象を発見しました」と、ロックフェラー大学のレオン・ヘス教授であるソハイル・タヴァゾイエ博士(Sohail Tavazoie MD, PhD)は述べています。

チームは、この新しいクラスの疲弊した細胞をTIM、つまり終末期炎症性ミクログリアと名付けました。TIMは、脳からプラークを効率的に除去する能力を失っており、それによってアルツハイマー病に寄与する可能性があります。

また、この研究は、アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブが脳内の免疫細胞とどのように相互作用しているかについても光を当てています。「APOE4バリアントを持つネズミにアデュカヌマブを投与したところ、TIMがある程度の機能を取り戻すことがわかりました」と、タヴァゾイエ研究室の博士課程研究員であるアロン・ミレット博士(Alon Millet PhD)は述べます。

 

年齢と炎症

ヒトはAPOE遺伝子の3つのバリアント、APOE2、APOE3、およびAPOE4のいずれかを持っています。タヴァゾイエ研究室の以前の研究では、これらのバリアントががんからCOVIDまでの疾患に対する体の反応方法に重要な役割を果たすことが示されていますが、アルツハイマー病とAPOE4との関連は特によく確立されています。人類の約20%が持つAPOE4バリアントは、アルツハイマー病の最も強力な遺伝的リスク要因の一つと考えられています。

タヴァゾイエ博士、ミレット博士、そして現在サウスカロライナ医科大学教員のホセ・レド博士(Jose Ledo, PhD)は、ヒトのAPOEバリアントを発現するアルツハイマー病モデルマウスを開発し、それらを加齢させることにより、APOE4がアルツハイマー病が脳に及ぼす影響をよりよく理解するために4年間を費やしました。「これらのマウスを系統的に生成することは大きな取り組みでした。それはホセとアロンの特定の専門知識が結集することによって可能になりました」とタヴァゾイエ博士は言います。

チームは、これらのマウスの脳内の免疫細胞のシングルセルアトラスを構築し、以前には記述されていなかったストレスと炎症の兆候に満ちたミクログリアの集団を特定しました。

APOE4を持つマウスの脳はTIMであふれていましたが、他のバリアントは比較的少ないTIMを持っていました。そして何を探すべきかがわかったところで、チームはまた、APOE4バリアントを持つ患者から寄付されたヒトの脳組織でTIMを見つけ始めました。この結果は、APOE4が脳の免疫細胞を疲弊させることによってアルツハイマー病のリスクを高める可能性があることを示唆しています。

研究者らはまた、最近承認されたアルツハイマー病薬アデュカヌマブが、損傷したTIMの状態を改善し、その条件を改善したことを発見しました。興味深いことに、この薬の効果はAPOE4を持つマウスでより顕著でした。そして、このような初期の発見が直ちに臨床に適用されるわけではありませんが、「これはアデュカヌマブが異なる遺伝子型で異なる方法で機能するかもしれない最初の兆候です。これは臨床医が調査すべきことかもしれません。」とミレット博士は言います。

 

免疫システムの自助努力を助ける

一部の研究者は、健康な免疫系が脳内にプラークが蓄積する前にそれをクリアすると考えており、アルツハイマー病はそのシステムが失敗し、プラークが蓄積すると発生するものだという理論があります。この理論に基づけば、仕事をするには疲れすぎているミクログリアをリハビリテーションすることで、脳に必要なサポートを提供し、それ自身を守る力を与えるかもしれません。そうであれば、TIMは有望な治療標的となるでしょう。

「TIMは数年にわたってこの炎症性の環境に浸かっており、もはや対処できなくなるまでに至ります。もし彼らを健康な状態に戻すことができれば、おそらく免疫系はアルツハイマー病を抑制できるかもしれません。」とミレット博士は言います。

この方向で、チームは現在、TIM形成につながるシグナル分子を探求し、その過程を妨害し、ミクログリアを健康に保ち、認知低下を減少させる薬の開発に貢献することを目指しています。長期的には、これが新しいアルツハイマー病治療法につながるかもしれません。

チームはまた、TIMが他の疾患に存在するかどうかを調査する予定です。ミレット博士は、TIMがこれまで見過ごされてきたかもしれないが、これらの疲弊した免疫細胞が脳腫瘍からパーキンソン病まで、他の脳の疾患にも関与している可能性があると疑っています。「炎症がTIMの蓄積を引き起こすため、私たちが見ているものはアルツハイマー病に特有のものではないかもしれません。十分な時間を与えれば、ほとんどのミクログリアはTIMになり得ます。」と彼は述べています。

画像:ミクログリア細胞

[News release] [Immunity article]

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