関節リウマチ(RA)の治療法は近年大きく進展しました。しかし、なぜか約20%の患者は、複数の抗炎症薬を試しても痛みが和らぎません。この原因は一体何なのでしょうか?
関節リウマチの複雑な痛みの謎
関節リウマチ(RA)は、手や足などの関節に痛みや腫れを引き起こす慢性疾患です。RA患者の約20%が複数の抗炎症薬を使用しても痛みが軽減しない理由が、ロックフェラー大学の分子神経腫瘍学研究室の臨床研究准教授であるダナ・オレンジ医師(Dana Orange MD)らの研究により明らかになりました。これらの患者の関節は、実は炎症ではなく過剰な組織成長が原因で痛みを感じているのです。
新しい遺伝子の発見
2024年4月10日にScience Translational Medicine誌に発表された論文「Synovial Fibroblast Gene Expression Is Associated with Sensory Nerve Growth and Pain in Rheumatoid Arthritis(滑膜線維芽細胞の遺伝子発現は感覚神経の成長と関節リウマチの痛みに関連する)」において、オレンジ医師とその同僚は、痛みを引き起こす815の遺伝子を特定しました。
遺伝子の役割
オレンジ医師によると、「これらの遺伝子は感覚神経を再配線し、抗炎症薬が効かない理由を説明しています」。この発見は、新しい治療法の開発につながる可能性があります。
遺伝子の影響
研究者らは、痛みを感じるが炎症がほとんどないRA患者39名の関節組織サンプルと自己報告された痛みのデータを分析しました。彼らは、グラフベースの遺伝子発現モジュール識別(GbGMI)という機械学習解析を使用し、患者の痛みと関連する最適な遺伝子セットを特定しました。RNAシーケンシングにより、15,000の遺伝子のうち約2,200がこれらの患者で発現が増加していることが分かりました。GbGMIを使用して、痛みと関連する815の遺伝子が特定されました。
痛みのメカニズム
シングルセル解析により、滑膜組織の4種類の線維芽細胞のうち、CD55+線維芽細胞が痛み関連遺伝子の発現が最も高いことが明らかになりました。これらの細胞は、滑液を分泌し、関節の摩擦を減少させます。さらに、これらの細胞はネトリン-4(Netrin-4)というタンパク質をコードするNTN4遺伝子を発現していました。
驚くべき痛みの経路
研究者らは、ネトリン-4が感覚神経の成長を促進することを発見しました。このタンパク質は、CGRP+(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)痛覚受容体の発芽と分岐を引き起こしました。RAの滑膜組織のイメージングにより、新しい血管がCGRP+感覚神経線維に囲まれ、過剰な組織成長(過形成)の領域に向かって成長していることが確認されました。この過程は、炎症と誤解されることが多い軟らかい腫れを引き起こしていると考えられます。
今後の治療の可能性
研究者らは、今後、痛みを引き起こす他の線維芽細胞産物についても調査を進める予定です。また、影響を受ける感覚神経の種類についても詳細に検討する必要があります。
「感覚神経は重要な役割を果たしており、すべての感覚を遮断することは避けるべきです」とオレンジ医師は述べています。「炎症が少ない患者に対して、より効果的な治療法を提供するために、詳細な研究が必要です。現在、これらの患者は年間70,000ドルもかかる薬を使用していますが、効果はほとんどありません。適切な薬を適切な患者に届けるために、私たちはもっと努力しなければなりません」。
関節リウマチ(RA)患者の中で、抗炎症薬が効かない約20%の患者は、炎症ではなく過剰な組織成長が痛みの原因であることが判明しました。オレンジ医師らの研究により、痛みを引き起こす815の遺伝子が特定され、新しい治療法の開発に向けた一歩となりました。今後の研究により、さらなる詳細が明らかになることが期待されます。



