モンキーフラワーは、黄色、ピンク、濃い赤橙色など、さまざまな色に輝いている。しかし、約500万年前に、その一部は黄色を失ってしまった。コネチカット大学の植物学者が、遺伝学的に何が起きて黄色の色素が失われたのか、そして種の進化にどのような影響があったのかを解明した。このScience誌に掲載された論文は、「モンキーフラワーの種分化に関与する分類群特異的な段階的siRNAの発見(Taxon-Specific, Phased siRNAs Underlie a Speciation Locus in Monkeyflowers)」と題されている。

モンキーフラワーは、他の植物が育たないようなミネラル豊富な厳しい土壌で育つことで有名だ。また、形や色が多様であることでも知られている。そして、モンキーフラワーは、たった1つの遺伝子の変化で新種が誕生することを示す典型的な例である。この例では、約500万年前にモンキーフラワーの一種が花びらの黄色い色素を失い、ピンク色を獲得し、受粉のためにハチを引き寄せた。その後、子孫の種がYUPと呼ばれる遺伝子の変異を蓄積し、黄色の色素を回復して赤い花を咲かせるようになった。その結果、ハチが寄りつかなくなった代わりにハチドリが受粉し、赤い花は遺伝的に隔離され、新しい種が誕生したという。

コネチカット大学の植物学者のヨウフ・ユアン博士とポスドク研究員のメイ・リアン博士(現在、中国南部農業大学教授)は、他の4つの研究機関の共同研究者とともに、モンキーフラワーが黄色にならないよう変化した遺伝子を正確に特定した。彼らの研究は、新しい遺伝子が表現型の多様性を生み出し、さらには新しい種を生み出すという説に重みを加えるものである。

問題のYUP遺伝子は、モンキーフラワーのゲノムのうち、3つの新しい遺伝子を持つ遺伝子座(領域)に存在する。これらの新しい遺伝子は、このグループ以外の種には見られないものである。これらの遺伝子は、モンキーフラワーのゲノムの他の部分にある他の遺伝子と重複している。特に、YUPは色とは関係のない既存の遺伝子の部分的な複製である。

遺伝学の標準的な考え方では、部分重複遺伝子は、それが由来する遺伝子を制御するとされている。この遺伝子が無関係の遺伝子に影響を与えるとは、とても考えられないことだった。リアン博士は、時間の無駄と考えるユアン博士の忠告を無視して、とにかくこれらの遺伝子が何をしているのかを調べることにした。リアン博士の執念は実を結び、YUP遺伝子は実は、モンキーフラワーなどの植物を黄色くする色素であるカロテノイドのマスターレギュレーターを標的にしていることを突き止めたのである。YUPは、カロテノイド遺伝子を抑制する低分子干渉RNA(siRNA)を多数産生する。新種の誕生に重要な形質に影響を与えるsiRNAを産生する遺伝子の例は、ほとんどない。

「この経験は、"常識"にとらわれないことがいかに大切かを教えてくれた」とユアン博士は言う。YUPはある遺伝子を制御しているだけでなく、この同じ遺伝子座にあるモンキーフラワーの色に影響を与える他の2つの遺伝子とは全く無関係であるとユアン博士は述べている。

近縁のモンキーフラワーにしかないこの3つの遺伝子のユニークさは、新種の進化を知る上で重要な手がかりとなる。

ほぼすべての種が固有の遺伝子を持っている。これは、ごく一部の種にしか見られないため、『分類群特異的』と呼ばれている。「ほとんどの場合、これらの遺伝子がどのような働きをしているかはわかっていない」とユアン博士は言う。今回の研究は、これらの分類群特異的遺伝子が新種の鍵となり得ることを示している。以前は、多くの遺伝学者や進化生物学者が、種を区別するのは多くの異なる種に共通する共通遺伝子の発現の変化であり、少数の特有な遺伝子が重要であるとは考えにくいと思っていたのである。

「我々は、進化を予測するのに十分なほど進化を理解していると思っている。しかし、今、我々は本当に理解していないことに気づいている。進化というのは本当に予測不可能なものなのだ」とユアン博士は語っている。

彼の研究室では現在、モンキーフラワーのゲノムが、色素の生成を空間的にどのように制御しているかを調べている。例えば、モンキーフラワーの中には、上部の花弁は全体的に白いが、下部の花弁には色があるものがある。ユアン博士らは、この植物がどのようにして花の特定の部分だけ色素を抑制しているのかを知りたいと考えている。

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ミムラス(モンキーフラワー)属の植物は、花の色や形が非常に多様である。(出典:Yuan Mimulus Lab, Pete Morenus/UConn)。

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