前回までに、これからは中分子創薬の有用であることを話しました。中分子創薬をするにあたって一番困難な問題である、中分子創薬に応用可能な中分子のライブラリーが少ないことについては、以前「中分子創薬開発において有望な化合物ライブラリーはあるの?」のところで、中分子創薬に有効な化合物はサイクリックペプタイド、ペプチドミメティックなどの天然物化合物が有効であることや、現状では分子量が1000以上3000位の中分子創薬に特化した化合物ライブラリーが、ペプチドドリーム社のもの以外に、殆ど存在しないことを話しました。そこで、今回は創薬のリード中分子化合物探索のために、「中分子有機化合物のライブラリーをどうするか」と、「低分子有機化合物ライブラリーの利用法」に関して話します。
幾つかの製薬会社は、独自でライブラリーを作成していると聞いています。自社でアミノ酸を合成しサイクリックペプタイドのライブラリーを作例するのも一つの考え方ですが、その場合ペプチドドリーム社のアミノ酸と同じにならないように、別のコンセプトでアミノ酸を合成する必要があると考えています。
次に天然物化合物を用いたスクリーニングですが、現在市販されている天然物化合物の中で分子量が1000以上の中分子化合物は非常に少ないと思います。そこで、天然物化合物のスクリーニングをするのであれば天然物の資源をもっているグループとの共同研究が必要になってきます。資源を持っているのは大学などのアカデミアの研究機関が多く、これらの研究機関もこれからの天然物化合物の活用を模索しているところが多いので、共同研究はやり易いと考えられます。ただ、今までの天然物化合物のスクリーニングは目的の化合物探索にマンパワーと時間がかかって来ました。そこで、これからこのスクリーニングをするには、「探索的プロテインープロテイン相互作用の解明」のところで話した、Surface Plasmon Resonance(SPR)やHydrogen/Deuterium Exchange with Mass Spectrometry(HDX)などの新しい技術を有効に活用して効率よく化合物探索を行っていく必要があると思います。
もう一つの中分子化合物のスクリーニングの方法として、私は今まで用いてきた低分子有機化合物、特に分子量500以下のライブラリーを用いてスクリーニングすることも可能性があると思います。その場合スクリーニングで探索された低分子化合物はそのまま創薬のリード化合物になるのではなく、探索された低分子化合物を基にリード中分子化合物を合成する方法です。それでは、この低分子スクリーニングを用いた中分子化合物探索の方法(図参照)を詳しく説明します。

以前にお話ししましたが、中分子化合物が有効なプロテインープロテイン相互作用(PPI)をプロテイン同士の電子密度の偏り、面で相互作用していると考えら、その相互作用する部分を阻害するためには中分子化合物が有効であると考えています。しかし、相互作用を起こす場合その位置を認識する結合部位が幾つか存在すると思われ、その部位は電子密度の偏りに関係なく、低分子との相互作用と同様に、立体的に水素結合などで低分子が入る部位になっていると考えられます。そこで、はじめにSPRなどで分子量500以下の低分子化合物をスクリーニングしてこのバインディング部位にバインドする化合物を探索します。このスクリーニングで何種類かの低分子化合物が探索されます。次に探索された化合物を全て混ぜたカクテルして再度スクリーニングし、残った化合物が異なる結合部位でバインディング活性が強い化合物になります。
図を例の様に、一次スクリーニングで6化合物にバインディング活性があり、それをカクテルにして2次スクリーニングを行った結果○と△と□の3化合物が残れば、バインディング部位は3か所あると考えられます。
更に、プロテインープロテイン相互作用部位の解析の情報を利用して、再スクリーニングで探索された低分子化合物をアミノ酸などで結んでサイクリックの創薬リードの中分子化合物を合成します。この方法は低分子スクリーニングを用いた中分子化合物探索の方法で、探索された低分子化合物がプロテインープロテイン相互作用部位のニードル的な役割を果たすことから、この低分子化合物スクリーニングはニードルスクリーニングとも言われています。私はこの低分子スクリーニングを用いた中分子化合物探索の方法が一番現実的かなと考えています。
それでは、次回はプロテインープロテイン相互作用部位の詳細な解析や、探索された中分子化合物が目的の阻害部位に相互作用しているかを確認する方法について説明します。
