植物の進化の謎に迫る、画期的なアプローチが登場しました!植物の遺伝子がどのように調節され、複雑な進化を遂げてきたのか、興味はありませんか?

ゲノムの歴史と従来ツールの限界

植物のゲノムは、多様な倍数性や、その大部分がトランスポゾンで構成されていること、そして全ゲノム重複の発生などにより、非常に複雑な歴史を持っています 。これらの特徴は、動物用に開発された現代の多くのゲノムアライメントツールを混乱させ、進化の過程で保存されてきた配列の探索を困難にしています。

表現型の進化の遺伝的基盤を解読するためには、シス調節配列の保存と多様化を支配する原理を定義することが鍵となります 。しかし、生物の多様性全体、特に深遠な時間(ディープタイム)にわたってシス調節要素を特定することはしばしば困難でした 。このような課題は、急速な配列進化や繰り返される遺伝子重複などがオーソログ(相同遺伝子)の関係を曖昧にしてしまう植物ゲノムにおいて、さらに増幅されます 。

 

新たな解析フレームワーク「Conservatory」の登場

これらの制限を克服するため、カーク・アムンソン(Kirk Amundson)博士、アナト・ヘンデルマン(Anat Hendelman)博士、イダン・エフロニ(Idan Efroni)博士らの研究チームは、新しいアルゴリズムを開発しました 。チームは、保存された非コード配列(CNS: conserved noncoding sequences)を特定するための比較ゲノミクスフレームワークである「Conservatory」を構築しました 。

Conservatoryは、相同グループをアンカーとして使用し、約120 kbのウィンドウ内でシンテニー(染色体上の遺伝子配列の保存性)に基づく局所アライメントを実行します 。そして、系統樹全体にアライメントを漸進的に伝播させます 。この系統発生を意識した段階的なアプローチにより、直接的なペアワイズ比較では見逃されてしまうような、短く保存されたセグメントの検出が可能になります 。

 

3億年の進化を辿る:大規模解析の成果

アムンソン博士らは、約3億年の多様化にまたがる284の植物種にConservatoryを適用し、約230万の保存された非コード配列(CNS: conserved noncoding sequences)を特定しました 。

  • 古代から受け継がれる要素: 保存の深さは大きく異なりましたが、被子植物の多様化以前から存在するものが3954個、裸子植物と被子植物間で共有されているものが633個発見されました 。
  • 発生と機能への影響: これらの古代の要素は、発生調節因子や転写因子の近くに多く見られました 。実際にトマトにおいて保存されたホメオボックス遺伝子周辺のいくつかの配列を破壊したところ、有害な発達上の影響が生じ、これらの要素の機能性が実証されました 。
  • ゲノム内での配置: 植物の保存された非コード配列(CNS: conserved noncoding sequences)は転写開始部位および終了部位の近くに高度に濃縮されていましたが、約4分の1は関連する遺伝子から25 kb以上離れた場所にありました 。間隔や距離は進化の過程で変化しましたが、その相対的な順序はしばしば保存されていました 。

 

研究の結論と今後の展望

従来、植物におけるシス調節の保存は、属や科内の近縁種を超えるとまれであると考えられてきました 。しかし今回の発見は、深く保存された調節コードが存在し、植物に広く普及しているものの、植物ゲノムの極端な進化のダイナミクスによって単に隠されていたに過ぎないことを示し、これまでの見方に異議を唱えるものです 。

Conservatoryは、遺伝子調節とその進化を支配するパターンと原理を特定するための基盤を提供します 。本研究の詳細は、Science誌の第392巻、第6800号に掲載された論文「「A deep-time landscape of plant cis-regulatory sequence evolution(植物のシス調節配列進化のディープタイム・ランドスケープ)」」にて報告されています 。

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adt8983

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