ルー・ゲーリッグ病として知られている致命的な進行性神経疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のいくつかのケースが、新たに発見された特定の遺伝子における遺伝子変異と関連している、と研究者達によって発表された。研究チームはこの遺伝子における変異が神経細胞の構造および成長に影響を及ぼすことを発見し、ALSがどのように細胞を壊し、麻痺につながるのかについての考察を得た。研究結果は2012年7月15日付けのNature誌に掲載された。
ALSは、筋肉をコントロールする神経細胞である運動神経に影響を及ぼす。ALS患者では四肢衰弱や嚥下難などの初期症状が見られる。患者のほとんどは症状発症から3-5年で、主に呼吸不全によって死亡する。ウスターのマサチューセッツ大学医学部の研究チームは、遺伝型ALSをもつ2家族における遺伝子変異を見つける研究を、国際ALS研究チームと共同で行った。研究チームはエクソーム・シーケンシングとして知られる技術を駆使し、DNA上のタンパク質をコードする部分(エクソーム)だけをデコードした。これにより、DNAにおける疾患の原因となる変異を含む領域を、効率的かつ十分に調べる事が可能なのである。このように綿密なエクソームのシーケンシングにより、プロフィリン(PFN1)遺伝子における複数の変異が、ALSを発症したファミリーメンバーにおいてだけ同定された。
その後行われた、世界中における他の272例の家族性ALS研究でも、症例の1-2%ほどのサブセットでプロフィリン変異が発見された。タンパク質であるプロフィリンは、神経細胞の足場または神経骨格の作成および再構築に重要な役割を果たす。ハエモデルでは、プロフィリンの乱れは軸索―1つのニューロンから次のニューロン、または運動神経から筋肉細胞へ信号を中継する長い神経突起–の成長を中断する。ALS患者におけるPFN1変異を同定した後、研究チームはこれらの変異が実験室で作られた軸索の成長も妨げることを実証した。またプロフィリン変異体は、ALSやパーキンソン病およびアルツハイマー病と関連付けられている異常なタンパク質の様に、神経細胞内で塊となって蓄積する。さらに、PFN1変異のある神経細胞はTDP-43として知られるタンパク質の塊を含んでいた。異常なTDP-43の塊はALS症例のほとんどで見られており、プロフィリンとALSの既知メカニズムとの関連性は高まるばかりだ。
「ALSは遅発型の、急速進行性疾患です。同じ家族を何十年もの間研究し続けない限り、研究用のDNAを入手するのは難しいのです。」と、マサチューセッツ大学医学部神経学助教授、ジョン・ランダーズ博士(Ph.D.)は、大規模な家族でALSを研究することが困難であることを説明した。ALSと関連付けられている遺伝子は1ダース以上あり、これらの知見は細胞骨格の乱れがALSや他の運動神経疾患において重要な役割を果たす、と現在の研究が示唆していることをサポートする。運動神経は筋肉につながる長い軸索を持つ大きな細胞である。神経骨格タンパク質は、軸索に沿ってタンパク質を神経の遠隔部分へ運ぶのに特に重要なのである。
「我々が同定する、原因となる遺伝子全てにおいて、我々は共通の経路を探します。新しい遺伝子を同定する度に、我々はパズルピースをまた一つ手に入れるのです。これらの遺伝子一つ一つが、何が起こっているのかを理解するのに役立つのです。発見する数が多ければ多い程、ALSにおいてどのような間違いが起こるのかを知る事が出来るのです。」と、ランダーズ博士は説明する。家族性ALSは全てのALS症例の10%に及ぶが、ALSのほとんどは突発性で、原因不明なのである。この新たな変異は家族性ALSに関連しているものだが、運動神経退化一般の元にあるメカニズムについての情報を明らかにしているため、突発性ALSを理解するためにも役立つ可能性がある。
「この発見は非常に重要であり、研究における新しい筋道を提供します。ALSの原因は様々な細胞以上によるものであり、単一の原因による疾患では無いという証拠も増えています。これらの経路が収束するのか、またするならばどこでするのか、という事は興味深い研究対象で、治療開発にも関係してきます。」と、国立神経疾患・脳梗塞研究所(NINDS)のプログラム・ディレクター、アメリー・ガビッツ博士(Ph.D.)は語る。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:New Gene Mutations Linked to Lou Gehrig’s Disease



