個別化医療への道を切り開く研究成果:潰瘍性大腸炎の重症度を予測する遺伝子変異を発見
デンマークの研究者らが、潰瘍性大腸炎患者の病状が一部で重症化する理由を解明する重要な発見をしました。この成果は、個々の患者に適した治療法を提供する「個別化医療」に向けた大きな一歩といえます。
潰瘍性大腸炎とは
腹痛、下痢、そして極度の疲労が、慢性的な腸疾患を患う何百万人もの人々の日常生活を支配しています。この疾患は、若年層で診断されることが多く、その進行には大きな個人差があり、患者には将来に対する不安がつきまといます。潰瘍性大腸炎は軽度で管理可能な場合もあれば、頻繁な入院や複雑な薬物治療、さらには複数回の手術が必要となる重症例もあります。
遺伝子変異と病状予測
デンマークのオールボー大学にある「炎症性腸疾患の分子予測センター(PREDICT)」の研究者らは、重症の潰瘍性大腸炎を発症するリスクを予測できる遺伝子変異を特定しました。この研究成果は、2024年10月15日に「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に掲載された論文「HLA-DRB1*01:03 and Severe Ulcerative Colitis」で報告されています。
研究のポイント
本研究では、遺伝子データとデンマークの健康記録を分析し、潰瘍性大腸炎患者の約3%が「HLA-DRB1*01:03」という遺伝子変異を持つことを明らかにしました。この変異を持つ患者のうち、診断後3年以内に40%以上が重度の消化器外科手術を受けており、これは変異を持たない患者の9%と比べて顕著に高い割合です。
「この遺伝子の存在が、重症化する患者群を特定する重要な手がかりとなります」と、本研究の筆頭著者であるマリー・ヴィベケ・ヴェステルゴー博士(Marie Vibeke Vestergaard)は述べています。
「早期の治療介入が病気の進行を防ぐ鍵となり、この発見が診断初期からの厳重なモニタリングと積極的な治療を可能にすることを期待しています」。
将来的な影響
研究チームの遺伝学責任者であるアレクセイ・サゾノフス准教授(Aleksejs Sazonovs)は、今回の発見が遺伝子研究の重要性を改めて示すものであると強調しました。「単一の遺伝子変異がこれほど大きな影響を与えるとは驚きです。私たちはデンマーク独自の健康データとバイオバンク資源を活用し、世界中の患者のために尽力しています」と語ります。
研究チームは今後、この遺伝子変異を持つ患者に対して、強化されたモニタリングと早期治療の影響を評価するための臨床試験を行う予定です。
潰瘍性大腸炎の概要
潰瘍性大腸炎は、慢性的な炎症性腸疾患で、特に若年層に多く見られます。アメリカだけでも約75万人が影響を受けています。その症状や進行は人によって大きく異なり、軽度の場合もあれば、頻繁な入院や手術が必要となる重症例もあります。
今回の研究成果により、患者に適した治療を早期に提供する可能性が広がり、患者の生活の質向上や医療コストの削減が期待されています。



