JDRFからグラントを受けたオレゴン保健科学大学(OHSU)とレガシー・ヘルス(オレゴン州の病院連合)の研究チームが、液状グルカゴン製剤が標準的な糖尿病ポンプで使用できる事を明らかにした。インシュリン治療を受けている1型糖尿病(T1D)患者の低血糖症を予防するために、この製剤はグルカゴンの幅広い利用の道を広げるものだ。
これは次世代の人工膵臓機能への道をも開く成果であり、インシュリンによってのみ血糖値の最適化を行なう方法を凌駕するものである。「私達は前回の研究において、少量のグルカゴンの注射によって、低血糖症が予防できる事を実証しました。この低血糖症は1型糖尿病では頻繁に起こる重篤な合併症で、発作を起こしたり意識不明に陥ったり、死亡する事もあるのです。」とOHSU医学部の内分泌学、糖尿病、臨床栄養学の准教で、レガシー・ヘルスの上級研究員であるW・ケネス・ワード,M.D.,は説明する。オレゴン州ポートランドにある、この2つの組織が本研究を共同で執り行っている。
研究成果は米国糖尿病協会(ADA)第72回大会(2012年6月)6月8日(金)と6月10日(日)の科学研究セッションにて発表された。ワード博士は、「現行のグルカゴン製剤では、携帯用ポンプで長期間使用できません。ですから、人工膵臓機能の一部として利用することは出来ませんでした。FDAの認可を得るには多くの動物実験や臨床試験が必要ではありますが、私達は、塩基性グルカゴンは長期間に渡って液状の性状を維持する事を発見しました。これは、2ホルモン依存型糖尿病ポンプとして、より進んだ治療法を確立できるものなのです。」と語る。この研究は、T1D患者に毎日グルカゴンを投与する方法の確立と、それに次いで、”マルチホルモン対応+完全自動”の閉ループ型人工膵臓システムの開発のキーとなるのだ。この次世代型人工膵臓システムでは、インシュリンとグルカゴンそしてその他の薬剤が自動的に投与される仕組みになっている。
グルカゴンは低血糖状態に呼応して自然に分泌されるホルモンであり、血糖値を上昇させる。しかしT1D患者においては、その機能が不全となっているのだ。インシュリンの機能を補完し、血糖値の微妙なコントロールを行なう役割を担っている。前回の研究では、インシュリン治療にグルカゴンを加えることにより、T1D患者における低血糖症の発症頻度を低減する事が実証された。これは糖尿病を有しないヒトの生理学を模倣したものである。しかし市販のグルカゴンは粉末であり、液体に溶解させても溶液状態を維持することは困難であり、調整後。即座に投与するしかなかった。ワード博士とその研究チームは、pHを上げればグルカゴンが液状を維持することを発見し、これを用いた製剤こそ、閉ループで2ホルモン対応の糖尿病ポンプに最適であるという結論に達したのだ。
「インシュリンとグルカゴンとを使用する人工膵臓システムの結果は大変良好です。次世代糖尿病治療の潜在需要が明確なので、私達はどうしてもポンプに使用できる液状を維持できるグルカゴンが必要だったのです。ワード博士の研究は、マルチホルモン対応、完全自動、閉ループの条件を満たす人工膵臓システムの確立にとって、実際的な方法を提示するものであって、私達はとてもワクワクして研究しているのです。」とJDRF治療部局の上級ディレクターであるサンジョイ・デュッタ博士は語る。
人工膵臓システムは、特別なコンピュータープログラムを介して継続的グルコースモニター(CGM)及びインシュリンポンプと繋がれ、糖尿病患者に適切なタイミングで適切な分量のインシュリンを投与する。3月にはFDAが米国内の外来患者に対する人工膵臓システムの臨床試験の実施を認可した。研究チームが計画する次世代のデバイスでは、インシュリンに加えて1つ以上のホルモンを供給し、糖尿病ではない人の膵臓機能により近い効果を得る事なのである。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Liquid Glucagon Formulation Discovered for Potential Use in Artificial Pancreas Systems



