米国のある59歳の心臓病患者は、危険なほどコレステロール値が高く、しかもスタチン系薬剤ではほとんどコレステロール値を下げることができなかったが、UT Southwestern Medical Centerの研究グループの研究作業から生まれた新しい作用機序の薬剤のおかげで今では正常に近いコレステロール値に下がっている。


昨年夏、PCSK9阻害薬と呼ばれるクラスの2種の薬剤が、コレステロール値の極端に高い患者向けの医薬として米食品医薬局 (FDA) の認可を受けた。

UT SouthwesternでPreventive Cardiology ProgramのDirectorとInternal Medicineの准教授を務めるDr. Amit Khera (写真右) は、「リスクのもっとも高い典型的な症状の患者の治療を考えれば、この薬剤クラスがどれほど重要か理解できる」と述べている。
ダラスでFrank’s Wrecker Serviceを経営し、6人の孫を持つFrank Brown氏 (写真左) は家族性高コレステロール血症を患っている。

これはコレステロール、特に「悪玉コレステロール」の低比重リポタンパク質 (LDL) の高コレステロール値を引き起こす遺伝性疾患である。

高LDLコレステロール値は、心疾患と強い関連がある。
ブラウン氏は心臓発作を二度経験しており、コレステロール値を下げるために複数の薬剤投与を用いたかなり強力な治療を受けてきたが、値は頑固なほど下がる様子がなかった。


ブラウン氏の心臓内科医を務めるDr. Kheraは、「初めてブラウン氏を診断した時、かなりはっきりとした心臓病の家族歴があることを知った。また、彼のコレステロール値はLDLが384というとんでもないレベルで胸痛を訴えていた」と述べている。UT SouthwesternでHypertension and Heart DiseaseのDallas Heart Ball Chairを務めるDr. Kheraは、体内でコレステロールを生成するために必要とする物質を阻害するスタチンというクラスの薬剤、腸内でコレステロールの吸収を阻害するエゼチミブという薬剤、胆汁酸を吸着するコレセベラムなど3種のコレステロール低下剤で治療した。しかし、この3種の医薬を使ってさえ、ブラウン氏のLDLコレステロール値は200前後にとどまったままだった。

昨年、FDAに認可された2種のPCSK9阻害剤は、UT Southwesternの遺伝学者、Dr. Helen HobbsとDr. Jonathan Cohenの研究成果から開発された医薬だった。ダラス市の6,000人の住民の膨大な医療データを集めた地域人口型研究、Dallas Heart Studyのデータを用い、この2人の研究者は、PCSK9タンパク質コード化遺伝子の特定突然変異が血中コレステロール値の低下と関連していることを突き止めた。さらに、Dr. HobbsとDr. Cohenは、PCSK9遺伝子の2つの突然変異を両親双方から受け継いだ女性を見つけた。この女性は、LDLコレステロール値が驚くほど低かった。LDLコレステロールの値が100未満であれば良好とされているが、この女性の場合14だった。しかも、重要なことは、この女性は非常に健康で、PCSK9を阻害する治療法が効果的なだけでなく、安全だということを示している。この研究を受けて、製薬会社がevolocumabとalirocumabという2種のPCSK9阻害剤を開発、認可を受けており、月1回または2回の注射で投薬されている。

Eugene McDermott Center for Human Growth and DevelopmentのDirectorを務めるDr. Hobbsは、Study of Human Growth and DevelopmentのEugene McDermott Distinguished Chair、Developmental BiologyのPhilip O’Bryan Montgomery, Jr.M.D. Distinguished Chair、Cardiology Researchの1995 Dallas Heart Ball Chairを兼務している。また、Internal Medicine教授でMcDermott Center所属のDr. Cohenは、Human Nutrition ResearchのC. Vincent Prothro Distinguished Chairを兼務している。

ブラウン氏は、PCSK9阻害剤新薬の一つの安全性と効力の臨床治験に参加しており、新薬が認可された時には、Dr. Kheraが、ブラウン氏の保険会社に対して、新しい投薬計画を認可するよう働きかけた。Dr. Kheraは、「コレステロール治療の場合、大部分の患者はスタチン系で十分に症状を抑えられ、その人達はそのままスタチン系の投薬を続けた方がいいが、ブラウン氏の場合はPCSK9阻害剤が有効な患者として申し分ない。彼は臨床治験に加わっていたからこの医薬で問題がないことは分かっていたし、また、注射の仕方も知っている。それに非常に高リスクな患者だった。コレステロールを下げる治療薬は一通り試して、もうこれしか残っていなかった」と述べている。

新薬を2週間ごとに注射する療法を始めて2か月後、ブラウン氏のLDLコレステロール値は111まで下がった。100以下という正常値には届いていないが、それまでのレベルに比べると半分近い値だ。まだ何年も事業を営み、ダラス・カウボーイズのフットボールを観戦し、孫達と時間を過ごすことを夢見ているブラウン氏にとって、これはありがたい徴候になっている。Dr. Kheraは、「標準的な医薬ではコレステロール値を抑えられない、Frank Brownのような患者は大勢いる。そのような患者に使える医薬があるというのはすばらしいことだ」と語っている。

この記事は、2016年2月25日に発表されたUT Southwesternのプレスリリースを基にまとめたものである。

原著へのリンクは英語版をご覧ください
PCSK9-Inhibitor Drug Class Proves Game-Changer for Patient with Extremely High Cholesterol
 

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