非侵襲性のPETイメージング法は、免疫細胞ががん細胞を殺すために放出するグランザイムB (写真) というタンパク質を測定する方法で、マウスと人間で、治療の初期に免疫チェックポイント阻害薬に反応するがんと、反応しないがんを判別することができた。その研究結果はCancer Research の2017年5月号に掲載されている。
この論文は、「Granzyme B PET Imaging as a Predictive Biomarker of Immunotherapy Response (免疫療法反応の予測バイオマーカーとしてのグランザイムB PETイメージング法)」と題されており、マサチューセッツ州ボストン市、Harvard Medical School のProfessor of Radiology と、Massachusetts General Hospital (MGH), Athinoula A. Martinos Center for Biomedical Imaging, Division of Precision MedicineのDirectorを務めるUmar Mahmood, MD, PhDがこの論文の首席著者になっている。
Dr. Mahmoodは、「チェックポイント阻害薬のような免疫療法は革命的ながん治療法になったが、この治療法が有効な患者は少数であり、大多数の患者にとっては何の益もないだけでなく、大きな副作用の危険があり、しかも他の治療法を試す時間を失うことにもなりかねない」と述べている。
免疫療法への反応は、がんのサイズを測定するCTスキャンやMRIスキャンのようにがんの細胞を測定する従来の方法でも、FDG PETのようにがんのブドウ糖取込量を測定する方法でも、免疫細胞が映り込んだり、ブドウ糖取込量が増加してがん細胞が大きく映るため、がん初期には免疫療法に反応するがんと反応しないがんを判別できない。組織生検も、がんの不均一性や、測定するバイオマーカー・タンパク質の量が常に変動することがあって、信頼性が低くなりがちである。
Dr. Mahmoodの研究チームは、免疫細胞が標的のがん細胞を死滅させるためにグランザイムBというタンパク質を放出するとこのグランザイムBに結合するプローブを考案し、がん細胞死滅を直接測定できるようにした。同チームは、放射性原子にこのプローブを結合させ、PETスキャンを使って全身の非侵襲的画像で免疫細胞ががん細胞攻撃のグランザイムBを活発に放出する部位を探した。
さらに、がんを抱えるマウスに免疫チェックポイント阻害薬を与え、その投薬の前後でこのプローブをテストしたところ、マウスの一グループが高いPETシグナル値を示した。これはがんに高レベルのグランザイムBが存在することを示しており、もう一つのグループではがん内のPET信号値は低かった。さらにこの2つのグループのマウスの試験を続けたところ、PETシグナル値の高かったマウスはすべて免疫チェックポイント阻害薬治療に反応し、がんも退縮していったが、PETシグナル値の低いマウス・グループでは治療に反応せず、がんも進行し続けた。
Dr. Mahmoodは、「PETイメージング法は定量的であり、効果の程度を測定し、数値化することができる」と述べており、単剤療法と併用療法のデータを比較してみると、併用療法ではがんグランザイムB PETシグナル値が大幅に増えていた。
さらに、MGHのKeith Flaherty, MD、Genevieve Boland, MD, PhDの協力を得て、9症例の人間の皮膚がん生検試料で、そのプローブをテストしてみた。9症例のうち6症例はnivolumab (Opdivo) の投薬を受けており、3症例はpembrolizumab (Keytruda) の投薬を受けていた。その結果、反応のあった患者の試料ではグランザイムBのレベルが高くなっていたが、無反応患者ではレベルが低かった。Dr. Mahmoodは、「免疫療法コースの初期に、その療法の効果が見込める患者とそうでない患者を判別できれば、個々の患者のケアを大幅に改善できる上に新しい治療法の開発を促進することに役立つのではないか」と述べている。
また、「この研究では、免疫療法開始のごく初期に治療に対する反応をかなり正確に予測するマーカーを見つけており、このマーカーを検出する画像プローブを開発し、反応を非侵襲的かつ正確に予測することができた。この発見は、がんのもっとも初期段階で様々な薬物併用を画像化できる上に、がんグランザイムBのレベルを用いて各治療法とその効果を比較できることから、医薬開発に大きなインパクトをもたらすと考えられる。さらには、高レベルのグランザイムB放出を促す医薬をさらに発展させる一方でグランザイムB放出が弱い医薬については改良したり、あるいは廃止したりということもできる」と述べ、「この研究で開発されたプローブがまだ臨床治験を受けていないという問題はあるが、研究チームは臨床治験に向けて努力している」とも述べている。
原著へのリンクは英語版をご覧ください
New Imaging Method May Predict Immunotherapy Response Early in Anti-Cancer Treatment



