伝染性のまれな腫瘍によりタスマニアデビルは絶滅の危機に瀕しているが、ワシントン州立大学とシアトルのフレッドハッチンソン癌研究センターの科学者らによる新しい研究は、この動物の生存とヒトの癌の新しい治療への希望を示している。2020年8月1日にGeneticsのオンラインで公開されたこの研究では、野生のタスマニアデビルの伝染性癌の成長を抑制する単一の遺伝子変異(RASL11Aの活性化)が見付かった。 この論文は、「RASL11Aの活性化に関連するタスマニアデビルでの腫瘍の自然退縮(Spontaneous Tumor Regression in Tasmanian Devils Associated with RASL11A Activation.)」と題されている。
「この遺伝子は、ヒトの前立腺癌および結腸癌に関係している」とワシントン州立大学の生物科学教授であるAndrew Storfer博士は述べた。 「この調査結果は、世界の数少ないタスマニアデビルを救うのに役立つが、これらの結果はいつの日かヒトの健康につながる可能性もある。」
Storfer博士とMark Margres博士が率いる研究チームは、現在ハーバード大学の博士研究員であり、自然に退行した、つまり、癌が自ら消え始めたdevil facial tumor disease(DFTD)症例のゲノムを調査した。
彼らは、腫瘍の退行に寄与する変異が遺伝子機能を変化させず、代わりに腫瘍の細胞増殖を遅らせる遺伝子をオンにしたことを発見して驚いた。 少なくとも、ラボではそのように動作する。 現在のヒトの癌治療は、多くの場合、毒性または衰弱により腫瘍のすべての痕跡を取り除くことに重点を置いていると、治療を通じて研究に貢献した癌生物学者でありフレッドハッチの教授であるDavid Hockenbery医師は述べている。
「細胞毒性薬を投与したり、手術したりせずに、腫瘍をだまして退行させる方法があれば、大きな進歩になるだろう」と彼は言った。 一方、感染症は、ヘリコバクターピロリによる胃がんやヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんなど、ヒトの癌全体の最大20%を引き起こす。 タスマニアデビルの場合、癌は感染症だ。
DFTDは、共通の社会的行動中に動物が互いに噛み合うと、動物間で広ががる。 1990年代半ば以降、この病気は肉食性有袋類の自然個体数を減少させ、現在オーストラリアの南東海岸沖のタスマニア島にのみ見られる。
Storfer 博士の研究室は、タスマニアデビルの保護活動を改善し、腫瘍とその宿主の共進化への理解を深めるために、米国とオーストラリアの研究者からなるNIH資金のチームを率いている 。
タスマニアデビルはお互いに猛烈だが、人が穏やかに扱うので大騒ぎすることもなく、調査員は動物を人道的に捕獲し、組織サンプルを収集して、野生に戻る前に監視のためのタグ付けは容易だ。
研究者らはタスマニアデビルを救うために働いているが、彼らはまた、腫瘍が自然に進化し、薬物や手術をせずに退縮することがあるのを見る前例のない機会を持っている。
「この疾患は主に致命的だが、増加する個々の動物から腫瘍が消失しているのが分かる」とStorfer博士は述べた。
このチームは、退縮した腫瘍における他の有望な変異の影響も調べている。
「将来的には、多くのヒトの癌の理解と治療に適用できる可能性について学びたいと考えている」とStorfer博士は述べた。
NIH国立ヒトゲノム研究所の癌遺伝学および比較ゲノミクス部門の責任者であるElaine Ostrander博士は、この論文の著者の1人である。
BioQuick News:Tasmanian Devil Research Offers New Insights for Tackling Cancer in Humans; Gene Mutation in Devils Leads to Regression of Deadly Tumor; Similar Gene Has Been Implicated in Human Prostate & Colon Cancers



