スーパーバグであるクロストリジウム・ディフィシル菌(C. Difficile)の保護鎧の壮大な構造が初めて明らかにされ、鎖帷子のように緊密かつ柔軟な外層が示された。この構造は、分子の侵入を防ぎ、将来の治療法の新しいターゲットになると、この構造を解明した科学者らは述べている。ニューカッスル大学、シェフィールド大学、グラスゴー大学の科学者とインペリアルカレッジ、ダイヤモンド光源研究所の研究者らが、鎖帷子のリンクを形成する主要タンパク質SlpAの構造と、それらがどのように配置されてパターンを形成し、この柔軟な鎧を作り出しているかを概説している。これにより、クロストリジウム・ディフィシル菌に特異的な薬剤を設計して、保護層を破り、分子が侵入して細胞を死滅させるための穴を開けられる可能性が出てきた。
2022年2月25日のNature Communicationsに掲載されたこのオープンアクセス論文は「クロストリジウム・ディフィシル菌のS層の構造と組み立て(Structure and Assembly of the S-Layer in C. Difficile)」と題されている。
保護鎧
下痢を引き起こすスーパーバグであるクロストリジウム・ディフィシル菌が抗生物質から身を守るために持っている手段の1つが、細菌全体の細胞を覆う特別な層、すなわち表面層またはS層だ。この柔軟な鎧は、細菌と戦うために我々の免疫系が放出する薬物や分子の侵入を防いでいる。この研究チームは、X線結晶構造解析と電子線結晶構造解析を組み合わせて、そのタンパク質の構造と配置を決定した。
ニューカッスル大学でこの研究を主導した高分子結晶学上級講師のポーラ・サルガド博士は、次のように語っている。「私は10年以上前にこの構造の研究を始め、それは長く厳しい道のりだったが、本当にエキサイティングな結果を得ることができた。驚くべきことに、外層を形成するタンパク質であるSlpAは、非常に狭い開口部を持っており、細胞内に入れる分子はごくわずかであることがわかった。これまで研究されてきた他の細菌のS層は、隙間が広く、より大きな分子が入り込むことができる傾向がある。このことが、Cクロストリジウム・ディフィシル菌を攻撃するために送り込まれた抗生物質や免疫系分子に対する防御の説明になるかもしれない。エキサイティングなことに、鎖帷子を構成する相互作用をターゲットにした薬物開発の可能性も出てきた。これを壊せば、薬物や免疫系分子が細胞内に侵入して殺せるような穴を作ることができだろう。」
感染症対策における現在の課題のひとつは、細菌を殺すために使用する抗生物質に対する抵抗力が高まっていることだ。WHOは、抗生物質耐性、より一般的には抗菌剤耐性(AMR)を、人類が直面する世界的な公衆衛生の脅威のトップ10のひとつと宣言している。
細菌はそれぞれ異なるメカニズムで抗生物質に抵抗し、中には抗生物質の作用を回避する方法を複数持っている、いわゆるスーパーバグと呼ばれる細菌も存在する。このスーパーバグに含まれるのが、ヒトの腸内に感染する細菌であるクロストリジウム・ディフィシル菌で、現在の3種類の薬剤を除くすべての薬剤に耐性がある。抗生物質を服用すると、腸内の善玉菌も一緒に死滅してしまう。また、クロストリジウム・ディフィシル菌の治療には抗生物質を服用するしかないため、サイクルを再開し、多くの人が感染を繰り返してしまうことも問題だ。この構造を決定することで、鎖帷子であるS層を壊し、穴を作って分子を侵入させ、細胞を殺すクロストリジウム・ディフィシル菌に特異的な薬剤を設計することが可能になる。
電子線結晶解析は、シェフィールド大学のロブ・フェイガン博士とパー・ブロー教授が担当した。
フェイガン博士は次のように述べている。「例えば、バクテリオファージを使って、クロストリジウム・ディフィシル菌に付着して死滅させることができれば、従来の抗生物質に代わる有望な方法になる。」
ニューカッスル大学のサルガド博士のチームから、博士課程の学生であるパオラ・ランゾニ・マングッチ氏とアンナ・バルウィンスカ・センドラ博士が、構成要素の構造と機能の詳細を解明し、SlpA全体のX線結晶構造を決定している。
パオラ氏は次のように語っている。「これは挑戦的なプロジェクトで、我々は何時間も一緒に過ごし、難しい菌を培養し、ダイヤモンド光源シンクロトロンでX線データを集めた。」
センドラ博士は、「共同作業が成功の鍵だった。このチームの一員となり、最終的に我々の研究を共有できたことは、非常にエキサイティングだった。」と付け加えた。
BioQuick News:Protective Armor of Superbug C. difficile Revealed



