エクソソームとは、細胞がデリケートな分子を保護し、全身に届けるために作るナノサイズの生体カプセルである(他にも機能がある)。エクソソームは、酵素による分解や、腸や血流中の酸性度や温度の変化にも耐えられる丈夫なカプセルであり、ドラッグデリバリーの候補として期待されている。しかし、臨床レベルの純度を達成するためにエクソソームを採取するのは、複雑なプロセスを要する。バージニア工科大学(VTC)のFralin Biomedical Research Instituteの教授であり、Center for Vascular and Heart ResearchのディレクターであるRob Gourdie博士は、「エクソソームは牛乳に豊富に含まれているが、他の乳タンパク質や脂質から分離するのは困難だった」と述べている。Gourdie博士の研究室では、殺菌していない牛乳からエクソソームを採取するスケーラブルな方法を開発した。Nanotheranostics誌に掲載されたこの精製方法を用いることで、研究チームは1ガロンの未殺菌牛乳に対して約1カップの精製されたエクソソームを抽出することがでたという。このオープンアクセス論文は、「牛乳から高品質な精製低分子細胞外小胞をスケーラブルに製造するための新規プロトコル(Novel Protocols for Scalable Production of High Quality Purified Small Extracellular Vesicles from Bovine Milk)」と題されている。
Gourdie博士は、Commonwealth Research Commercialization Fund Eminent Scholar in Heart Reparative Medicine Researchや、Virginia Tech College of EngineeringのBiomedical Engineering and Mechanicsの教授も務めている。
研究チームは、COVID-19パンデミックの際に、ろ過方法、カルシウムレベルに影響を与える温度や化学処理のタイミングを最適化した、多段階でコスト効率の高い精製プロセスを開発した。Fralin Biomedical Research InstituteのGourdie博士の研究室のポスドクであるSpencer Marsh博士とKevin Pridham博士、そしてGourdie博士の研究室のマネージャーであるJane Jourdan氏が、独自の手順を開発するための実践的な作業を行った。
「我々のチームは、パンデミックの最中、効果的かつ安全にこのプロジェクトに取り組んだ」「彼らの無私のチームワーク、熱意、そして困難を克服するための献身は、科学の世界では思ったよりも頻繁に起こることではない。何度も失敗したが、最終的には段階的にうまくいくプロセスを見つけ出すことができた」とGourdie博士は述べている。
今回の研究には参加しなかったが、メイヨークリニックの医学助教授であるJoy Wolfram博士は、今回の新しいプロトコルによってエクソソームの医薬品としての可能性が高まったと述べている。
「細胞外小胞の分離と製造をスケーラブルに行うことは、これまで臨床応用の妨げとなっていたが、この論文はその障害を克服する道筋を示している」とWolfram博士は述べている。Wolfram博士は以前、タンジェンシャルフローろ過技術を用いたプロトコルを発表しており、Gourdie博士のチームはそれを応用して牛乳のエクソソームを分離した。
エクソソームは、ヒトをはじめとする哺乳類の研究対象となるすべての細胞から自然に分泌されるもので、血液、リンパ、尿、牛乳などに多く含まれている。エクソソームは、保護膜に包まれており、生体分子、遺伝物質の断片、化学信号などを細胞間で長距離移動させることができる。
過去10年間で、エクソソームの医薬品への応用、特にペプチドやマイクロRNAなどの壊れやすい薬剤の送達に関する研究が急増している。
「ワクチン注射の代わりに、看護師がミルクセーキを渡してくれたとする。そのミルクセーキには、心筋梗塞から心臓などの内臓を守るための治療用ペプチドが入ったエクソソームが入っているかもしれない」とGourdie博士は述べている。
エクソソームは、血液脳関門を通過することができる。血液脳関門とは、不要な病原体や化学物質から脳を保護する細胞プロセスの集合体で、神経疾患や脳腫瘍を治療するための治療薬を届ける新たな方法だ。
Gourdie博士は、「エクソソームの使用可能性を向上させることで、無限の臨床応用が可能な幅広いドラッグデリバリー方法が可能になる」と述べている。
Gourdie博士は、地元の乳製品加工工場であるHomestead Creamery社と提携し、この研究のために未殺菌の牛乳サンプルを入手した。
Homestead Creamery社の共同設立者であり、共同経営者でもあるDonnie Montgomery氏は、「我々は常に関係性に基づいてビジネスを展開しており、今回のコラボレーションは我々にとってエキサイティングなものだ」と述べている。
2020年、Gourdie博士は、バージニア工科大学のLICENSE: Center for Technology Commercializationを通じて、エクソソームを使って心臓の薬を届けるための知的財産をライセンスし、The Tiny Cargo Co.を設立した。
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Homestead CreameryでのJourdan、Pridham、Montgomery、Gourdie、Marsh。(Credit: Whitney Slightham for Virginia Tech)
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殺菌していない牛乳から分離したエクソソームの電子顕微鏡写真。(Credit: Spencer Marsh / Gourdie Lab).

BioQuick News:Researchers Develop New, Scalable Method to Purify Exosomes from Cow’s Milk; Advance May Smooth Path to Clinical Utility



