鳥は、仲間を見つけるため、捕食者を追い払うため、あるいは単に楽しむために音を発します。しかし、鳥が発する音の多様性を生み出す条件については、十分に解明されていません。ウィスコンシン大学マディソン校の研究者らは、世界中の鳥の音に影響を与える要因を調査する初のグローバル研究を実施しました。本研究では、10万件以上の音声記録を分析し、その結果を2024年11月6日にオープンアクセス論文として『Proceedings of the Royal Society B–Biological Sciences』誌に発表しました。この論文は、同誌の2024年11月号の表紙論文として掲載されました。

これまで、鳥の生息地、地理的要因、体の大きさ、くちばしの形状が鳥の音に与える影響については、小規模な研究が行われてきました。しかし、ウィスコンシン大学マディソン校の博士課程の学生であるH.S. サティヤ・チャンドラ・サガル(H.S. Sathya Chandra Sagar)は、森林・野生生物生態学部(Department of Forest and Wildlife Ecology)およびネルソン環境学研究所(Nelson Institute for Environmental Studies)のズザナ・ブジヴァロヴァ教授(Zuzana Buřivalová)と共に、これらの仮説が世界規模で成り立つかを検証しました。

サガル氏は、世界中の人々が記録し、鳥類観察データベース「xeno-canto」に投稿した鳥の音声記録を分析しました。その結果、既知の鳥類種の77%を網羅するデータセットが得られました。

本研究の主な発見は以下の通りです。

  • 鳥の生息地は、発する音の周波数に予想外の影響を与える
    例えば、流れる水が多い生態系では、低周波で持続的なホワイトノイズが発生します。このような環境では、鳥はより高い周波数の音を発する傾向があることが判明しました。これは、水の音にかき消されないようにするためだと考えられます。

  • 同じ緯度に生息する鳥は似たような音を出す
    このパターンが世界規模で確認されたことは、鳥の鳴き声の進化を解明する上で重要な発見です。地理的要因が鳥の音に与える影響について、さらなる研究が促される可能性があります。

  • くちばしの形状と体重は音に重要な影響を与える
    一般的に、小型の鳥は高周波の音を発し、大型の鳥は低周波の音を発します。本研究のグローバル分析により、この仮説が正しいことが確認され、さらにくちばしの形状、体重、音の関係について新たな知見が得られました。

  • 小型の鳥は、より広い周波数帯で音を発する傾向がある
    これは、捕食者から身を守るための戦略の一つと考えられます。小型で脆弱な鳥は、高周波の音で仲間とコミュニケーションをとる一方、低周波の音を発して捕食者を欺き、自分をより大きく見せることができる可能性があります。

本研究は、特定の地域で聞こえるあらゆる音を含む「サウンドスケープ」の理解にも貢献しました。サウンドスケープは生態系の保全研究において重要な要素ですが、サガル氏は「私たちはサウンドスケープを支配する要因についてほとんど知らない」と指摘します。

彼は、本研究が今後の研究の基盤となり、サウンドスケープを活用した生態系の健康状態の監視手法の発展につながることを期待しています。

「熱帯地域や世界各地では、大型の鳥が食肉目的で狩猟される傾向があります」とサガル氏は説明します。「大型の鳥は低周波の鳴き声を発することが多いため、特定の地域で低周波の音がほとんど聞こえない場合、その地域では狩猟が活発に行われている可能性があると推測できます。」

次に、サガル氏は24時間のサウンドスケープ記録を分析し、一部の鳥が音の周波数だけでなく鳴く時間帯を調整することで、騒音の多い環境でも仲間と意思疎通を図っているのかどうかを調査する予定です。また、鳥類観察者や市民科学者が、自然界の新たな発見に重要な役割を果たしていることも強調しました。

[News release] [Proceedings of the Royal Society B–Biological Sciences article]

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