今回から中分子創薬の詳細について話すことにします。内容としては先ず多くの創薬研究者が思う、「中分子有機化合物は本当に医薬品になるのだろうか?」との疑問に対する話から始めて、創薬に応用可能な中分子のライブラリー、更に中分子が最も有効と考えられるプロテインープロテイン相互作用阻害剤における相互作用部位の解析手法、最後に総合的な創薬開発が期待される中分子創薬と今後の展望について話を進めたいと思います。
それでは、初めに私が講演した中分子創薬セミナーの際に多くの創薬研究者から疑問として質問されるのが中分子化合物は医薬品になるのですかとのことです。
それは、今まで開発された中分子医薬品はセファロスポリンやFK-506で、これらの化合物は特別で1990年代に開発されたものですが、それ以来中分子医薬品は殆ど開発されてきていないではないこと、その原因について中分子化合物は体内動態が悪いし、更に分子量から考えて体内に入ると異物と認識されて抗原抗体反応を起こし易いのではないかとの疑問がだされます。
まずは、この疑問に答えることで、中分子有機化合物が医薬品になると考えた根拠を説明することにします。 セファロスポリンやFK-506が探索されたのは1980年代で、その頃の医薬品探索は天然物化合物を用いたビトロアッセイが主流でした。
そのため、低分子から中分子化合物までの探索さに限定され、見つかった化合物がそのまま医薬品になることは無く、活性を向上させたり、体内動態を良くすることが必要で、そのために化学合成による化学構造の変換が必要でした。
そこで、化学合成のやり易い低分子化合物が選ばれることが多くなり、必然的に低分子が作用する、プロテインの活性化を阻害する薬剤の開発が優先しました。また中分子化合物はプロテインープロテイン相互作用部位を阻害する化合物ですが、その創薬のための高次元のアッセイ系の開発がまだ難しかったのも中分子化合物が創薬のリードに選ばれなかった要因と考えられます。更に1990代に入ると低分子化合物の創薬開発はプロテインバインデングアッセイが出来るようになり、2000年代ではハイスループットScreeningが創薬探索の支流になったのです。
そのころ、以前にも紹介しましたが、創薬Screeningは標的プロテインの活性のON-OFFをする部位をターゲットにしていたため低分子化合物が有効であり、そこで低分子化合物Screeningでは分子量が500位までが良いというファイザールール適応する場合が多く、1000以上の分子量の化合物は対象外として排除してきました。そのため、最近はプロテインープロテイン相互作用を阻害する医薬品が殆ど開発されないのです。
しかし、今はプロテインープロテイン相互作用を阻害する薬剤のハイスループットScreeningが出来るようになり、そこで中分子化合物の有用性が高まっています。
次は、中分子化合物は化合物の科学的な物性上医薬品になり難いのではないかとの疑問についてですが、昔の天然物を用いたビトロアッセイではセファロスポリンやFK-506のように、経口投与されて血液中では水溶性残基を表面に出した水溶性として振る舞い、体内組織に吸収されると水溶性残基を内側にして脂溶性化合物に変わる物性を持った化合物が多く存在します。この様な性質を持った化合物の多くは、サイクリックペプタイドやペプチドミメティック化合物で薬のリード化合物になると考えています。更に、分子量的に考えて、抗原抗体反応を起こしてしまうのではないかとの懸念ですが、今まで私が天然物のScreeningを行った経験から、ペプタイド、サイクリックペプタイドやペプチドミメティック化合物で分子量3000以下の中分子化合物であれば抗原抗体は殆ど起こさないのではないかと思っています 以上のことから中分子有機化合物はこれからの創薬開発において有望な化合物と私は考えています。しかし、中分子医薬品研究には創薬に応用可能な中分子のライブラリーが少ないという、問題もあり、次回にそのことに関してお話しすることにします。
