お肌の老化やさまざまな病気の原因とされながらも、傷の治りを助けることもある不思議な細胞、「ゾンビ細胞」。この一見矛盾した振る舞いの謎を解く鍵が、最新の研究によって見つかりました。実は「ゾンビ細胞」は一種類ではなく、それぞれ異なる個性を持つサブタイプが存在したのです。もしかしたら、体に良いゾンビ細胞だけを残し、悪さをするものだけを狙い撃ちできる未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。体内で役目を終えても完全には死なずに留まる老化皮膚細胞は、しばしば「ゾンビ細胞」と呼ばれます。これらの細胞は、炎症を引き起こして病気を促進する一方で、免疫系による創傷治癒を助けるという、一見矛盾した存在として知られてきました。
しかし、新しい研究成果がその理由を説明してくれるかもしれません。実は、すべての老化皮膚細胞が同じではなかったのです。ジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちは、それぞれ異なる形状、バイオマーカー、機能を持つ3種類の老化皮膚細胞のサブタイプを特定しました。この進歩により、科学者たちは有益な細胞はそのままに、有害なタイプだけを標的にして除去する能力を手にすることができるかもしれません。この研究成果は、2025年4月25日付の科学誌Science Advancesに掲載されました。オープンアクセスの論文タイトルは「Single-Cell Morphology Encodes Functional Subtypes of Senescence in Aging Human Dermal Fibroblasts(単一細胞の形態が老化ヒト皮膚線維芽細胞における機能的サブタイプをコードする)」です。
「私たちは、老化皮膚細胞が老化免疫細胞や老化筋細胞とは異なることを知っていました。しかし、同じ種類の細胞内では、老化細胞はすべて同じものだと考えられがちでした。例えば、皮膚細胞は老化しているか、していないかのどちらか、というようにです」と、ジョンズ・ホプキンス大学の生物医工学助教であるジュード・フィリップ博士(Jude Phillip, PhD)は語ります。「しかし、私たちの発見によれば、皮膚細胞が老化、つまりゾンビのような状態に陥るとき、細胞は3つの異なる経路のいずれかをたどり、それぞれがわずかに異なるサブタイプへと変化する可能性があることがわかってきました。」
研究チームは、機械学習とイメージング技術の新たな進歩を活用し、米国で最も長く続いている老化に関する研究プロジェクトで、国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の資金提供を受けている「ボルチモア縦断研究」に参加した20歳から90歳までの50人の健常なドナーから採取した皮膚細胞サンプルを比較しました。
研究者たちは、皮膚組織から、組織に構造を与える足場を産生する細胞である線維芽細胞を抽出し、老化に伴って起こるDNA損傷によって、これらの細胞を老化状態へと誘導しました。老化細胞は加齢とともに自然に蓄積するため、高齢のドナーからのサンプルには、健康な(老化していない)線維芽細胞と老化線維芽細胞が混在していました。
特殊な色素を用いることで、研究者たちは細胞の形状や、老化細胞を示すことが知られている染色された要素の画像を撮影することができました。この研究のために開発されたアルゴリズムが画像を解析し、各細胞について87種類の異なる物理的特徴を測定し、線維芽細胞をグループに分類しました。
その結果、線維芽細胞には11種類の異なる形状とサイズがあり、そのうちの3種類が老化皮膚細胞に特有のものであることを研究者たちは発見しました。研究チームがC10と名付けた老化線維芽細胞のサブタイプの一つだけが、高齢のドナーにおいてより多く見られました。
ペトリ皿での実験では、ゾンビ細胞を標的として殺すように設計された既存の薬物療法に曝露した際、各サブタイプは異なる反応を示しました。例えば、臨床試験で検証中の薬剤であるダサチニブとケルセチンの併用療法は、C7老化線維芽細胞を最も効果的に殺傷しましたが、加齢に関連するC10老化線維芽細胞の殺傷効果は限定的でした。
どの線維芽細胞サブタイプが有害で、どれが有益なのかを検証するにはさらなる研究が必要ですが、今回の発見は、薬剤が特定のサブタイプだけを標的にできることを示しています。
「この新しい発見により、炎症や疾患を引き起こす老化のサブタイプが特定され次第、それを優先的に標的とする新しい薬剤や治療法を開発するためのツールが手に入りました」とフィリップ博士は述べています。
より精密な老化細胞の標的化は、がん治療にも利益をもたらす可能性があると研究者たちは述べています。
特定の治療法は、がん細胞の老化を誘発し、制御不能に増殖するがん細胞を活動停止したゾンビ細胞に変換するように設計されています。これらの治療法は腫瘍の増殖を止めることができますが、その結果として老化細胞が残ります。従来の化学療法もまた、副作用として線維芽細胞のような細胞を老化へと向かわせます。治療中に老化細胞が蓄積することは、患者の免疫系が最も脆弱な時期に炎症を促進する可能性があるため、問題となることがあります。
化学療法の後に投与される薬剤で、この「後始末」をし、有益な老化細胞を残しつつ有害な老化細胞を除去できれば、患者にとって有益となるでしょう。このような種類の薬剤は、セノセラピー(老化細胞除去療法)と呼ばれています。
今後、研究チームはフラスコやペトリ皿の中だけでなく、実際の組織サンプル中の老化サブタイプを調べ、それらのサブタイプが様々な皮膚疾患や加齢関連疾患とどのように関連しているかを確認する計画です。
「私たちの技術がさらに発展すれば、特定の疾患に関与する老化細胞を標的とするのに、どの薬剤が有効かを予測する助けとなることを期待しています」とフィリップ博士は言います。「最終的な夢は、臨床現場でより多くの情報を提供し、個々の診断を助け、健康上の成果を高めることです。」
写真:ジュード・フィリップ博士(Jude Phillip, PhD)



