University of Californian, San Francisco (UCSF) の研究者が主導して行った多施設共同研究の結果によれば、ダウン症候群および他の2種のまれな染色体異常の発見には標準的な非侵襲性スクリーニング検査法よりも、妊娠10週間から14週間の間にCell Free DNA(cfDNA)血液検査をする方が効果的との可能性が示された。この研究では、16,000人近い妊娠女性を追跡調査した結果、Cell Free DNA血液検査がダウン症候群で生まれた38人を正確に予測した。ダウン症候群は認知障害を伴い、いくつかの疾患のリスクも高めることが知られている。
この血液検査による診断は新生児検査、産前産後の遺伝子解析で確認された。この検査では妊娠女性の血液中に浮かんでいるごく少量の胎児のDNAに注目している。DNAは、ポリメラーゼ連鎖法 (PCR) と呼ばれる分子転写テクニックを使って増幅した上でシーケンシングにかけ、各染色体DNA相対量を比較できるようになっている。DNAが多すぎるというのは、染色体に何らかの障害があることを示しており、ダウン症候群の場合には23対の染色体の一つ、21番染色体の過剰な複製が特徴になっている。2015年4月1日付New England Journal of Medicineのオンライン版に掲載されたこの研究論文によると、同じ妊娠女性が標準的なスクリーニング検査を受けた結果では38人中30人だけがダウン症候群の疑いありと判定された。
この論文は、「Cell-Free DNA Analysis for Noninvasive Examination of Trisomy (Cell Free DNA解析によるトリソミー非侵襲性検査)」の表題で掲載されている。このスクリーニング検査では、採血血を検査し、染色体異常に伴うホルモンやタンパク質を判定する。同時に首の後の後頸部浮腫リンパ液の超音波検査も行い、過剰であればダウン症候群の疑いがある。妊娠女性の平均年齢は30歳で約4人に1人が35歳を超えており、従来、その年齢層の妊娠は高リスクとみられており、産前に羊水穿刺などの侵襲性検査を受けるよう勧められている。
UCSFのClinical Obstetrics and Gynecology教授でこの論文の第一筆者であるMary Norton, M.D.が指導したこの研究では、Cell Free DNA分析のもう一つの大きな利点として、ダウン症候群誤診の率が相対的に低いことを挙げている。標準的な検査法は偽陽性の判定を出す率が高いことが知られており、それに比べてCell Free DNA法ではその率がかなり低くなる。Cell Free DNA検査法では偽陽性は9件のみだが、標準検査法では854件にものぼった。この研究の対象になった妊娠女性ではその他にもごくまれな染色体異常が2件見つかったが、Cell Free DNA検査法の精度は標準検査法をはるかに上回っている。またエドワーズ症候群とも呼ばれる18トリソミー10件ではCell Free DNA検査法は9件を正確に発見し、また残る1件も偽陽性と判定した。
それに対して、標準検査法では8症例が正しく診断されたが49人が偽陽性だった。パトウ症候群とも呼ばれる13トリソミーの場合、Cell Free DNA検査では2件を正しく診断し、偽陽性は1人だったが、標準検査法では、1件を正しく診断し、28人について偽陽性の判定を出した。このような研究結果は、Cell Free DNA検査が標準プロトコールよりも優れていることを示すものと考えられるが、同時にこの研究では慎重な対応を強調している。
論文の中で、「標準的なスクリーニング検査は、Cell Free DNA検査では判定できない様々な異常のリスクを見つけることができる」と述べられている。また染色体数異常を原因とする障害である異数体のうち、ダウン症候群は50%強程度だと述べている。しかも、胎児のDNAが不十分あるいは測定不可能量とされた血漿、あるいはアッセー不良やシーケンシング結果の変動が大きすぎて解読困難と判定され、除外された488人の妊娠女性の場合、驚くほどの高率で異数体が見られた。そのうちで2.7%の胎児が染色体異常を持っており、その中にはCell Free DNA法では発見できないタイプのものもあった。この率はグループ全体の有病率0.4%をはるかに上回っている。この除外されたコホートを対象結果に加えていれば、Cell Free DNA法による発見率はかなり低くなる。
Dr. Nortonは、「Cell Free DNA検査を用いれば、現在のスクリーニング検査に比べて偽陽性ははるかに少なくなり、侵襲的検査やそれに伴う流産の可能性を抑えることができる」と述べているが、同時に、患者はこの検査法の限界についてもよく知らされなければならないと付け加えている。さらに、「医療専門家は患者の希望をよく把握し、産前スクリーニング検査と診断検査の違いをよく説明しなければならない。また、Cell Free DNA検査を選ぶ女性には、この検査はダウン症候群の発見は非常に正確だが、ごく少数の染色体異常だけを調べる検査法であるため、他の検査法のような総合的な判定はできないということを説明しなければならない。また、妊娠女性には、検査結果が間違っている場合のリスクや、結果が出ない場合に侵襲的検査をするメリットとデメリットもよく説明しなければならない」とも述べている。
この論文の共著者として、Dr. Nortonの他には、カリフォルニア州サンディエゴ市ラホヤのUniversity of CaliforniaのLouise Laurent, M.D., Ph.D.、カリフォルニア州リバーサイドのPerinatal Diagnostic CenterのHerb Brar, M.D.、カリフォルニア州サン・ホセのAriosa DiagnosticsのDesiree Hollemon, M.D.とThomas Musci, M.D.、スエーデンのSahlgrenska University HospitalのBo Jacobsson, M.D., Ph.D.、ノース・カロライナ州ダラムのDuke UniversityのGeeta Swamy, M.D.、ニュージャージー州ニューブランズウィックのSt. Peter's University HospitalのAngela Ranzini, M.D.、オレゴン州ポートランド市のNorthwest Perinatal CenterのMark Tomlinson, M.D.、オレゴン州ポートランド市のOregon Health and Science UniversityのLeonardo Pereira, M.D.、オクラホマ州オクラホマ・シティのPerinatal Quality FoundationのJean Spitz、ニューヨーク市のColumbia UniversityのHoward Cuckle, M.D.とRonald Wapner, M.D.らが名を連ねている。
原著へのリンクは英語版をご覧ください
UCSF-Led Study Suggests Superiority of Non-Invasive, Cell-Free DNA Blood Test in Detecting Down Syndrome; Test Not As Widely Comprehensive for Other Ailments As Standard Tests, However



