遺伝性失明「LCA1」における画期的な遺伝子治療、患者に新たな視界を提供

フロリダ大学(University of Florida, UF)の研究者らが開発した遺伝子治療により、稀少な遺伝性失明「レーバー先天性黒内障1型(LCA1)」を患う患者が劇的な改善を経験しました。治療を受けた患者の中には、星を初めて見ることができた人や雪の結晶を初めて目にした人もいます。多くの患者は日常生活での外出が容易になり、ハロウィーンのお菓子のラベルを読むことも可能となりました。

臨床試験と治療の効果

この治療法は、GUCY2D遺伝子における両アレル変異によるLCA1患者を対象としたもので、「ATSN-101」と名付けられた遺伝子治療を用いた臨床試験の結果が2024年9月7日、権威ある医学誌The Lancetに掲載されました。論文のタイトルは「Safety and Efficacy of ATSN-101 in Patients with Leber Congenital Amaurosis Caused by Biallelic Mutations in GUCY2D: a Phase 1/2, Multicentre, Open-Label, Unilateral Dose Escalation Study(GUCY2Dの両アレル変異によるレーバー先天性黒内障患者におけるATSN-101の安全性と有効性:第1/2相、多施設、オープンラベル、片眼用投与量エスカレーション試験)」です。

治療を受けた患者は、光感度が最大1万倍改善し、視力検査表でより多くの行を読むことができるようになり、標準化された迷路のナビゲーション能力も向上しました。研究者らは、この改善を「真っ暗闇での生活から、かすかな明かりが灯るようになった感覚」と表現しています。

安全性と次のステップ

この治療は、眼の光感受性細胞に必要なGUCY2D遺伝子の正常コピーをウイルスベクターを用いて送り込む技術を用いています。治療は片眼に限定され、網膜に直接注射されました。副作用は軽微で、主に外科的な合併症やステロイドで対処可能な軽度の炎症にとどまりました。

フロリダ大学の細胞・分子治療学部門長であり、論文の共著者、さらには治療法を開発したAtsena Therapeutics社の共同創設者でもあるシャノン・ボイ博士(Shannon Boye, PhD)は、「今回の治療結果は第3相試験および最終的な商業化に向けた道を開くもの」と述べています。

希少疾患に向けた新たな希望

LCA1は欧米で約3,000人の患者がいる稀少疾患で、視覚の大部分を失い、移動や読書に大きな支障をきたします。ボイ博士は2001年の大学院生時代からこの治療法の研究を開始し、夫であるサンフォード・ボイ博士(Sanford Boye)との共同研究で、正常なGUCY2D遺伝子を目の適切な細胞に運ぶウイルスベクター技術を開発しました。

Atsena Therapeutics社は2019年に設立され、今回の研究を支援しました。同社のチーフメディカルオフィサー、藤田 健司医師(Kenji Fujita, MD)は、「この研究成果は患者の生活の質を大きく向上させる可能性を秘めている」とコメントしています。

[UF news release] [University of Pennsyvania news release] [The Lancet article]

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