バクテリオファージを活用した革新的な細菌検出テスト—食品安全と診断技術を一変させる新手法

 細菌汚染を簡単に判別できる新たな検査技術が、カナダのマクマスター大学 の研究チームによって開発されました。この技術は、バクテリオファージ(bacteriophage) を利用し、サンプル中に病原菌が存在するかどうかを 色の変化 で簡単に確認できるという画期的なものです。

この技術により、食品の安全性が向上し、感染症の診断が より迅速かつ簡便 になることが期待されています。本研究成果は、2024年11月26日付の『Advanced Materials』 に掲載されました。

論文タイトルは、「Bacteriophage-Activated DNAzyme Hydrogels Combined with Machine Learning Enable Point-of-Use Colorimetric Detection of Escherichia coli(バクテリオファージ活性化DNAザイムハイドロゲルと機械学習による大腸菌の簡易比色検出)」 です。

 

バクテリオファージを活用した「色で判別する細菌検査」とは?

この新技術では、無害なバクテリオファージを特殊なバイオジェル内に埋め込み、水や尿、牛乳などの液体中の細菌を検出 します。

この技術のポイントは以下の通りです。

 

ターゲットの細菌が存在する場合

 バクテリオファージが細菌を攻撃し、細菌内の分子が放出される → バイオジェルが反応し、色が変化

ターゲットの細菌が存在しない場合

色の変化なし → 汚染がないことを確認できる

このプロセスは わずか数時間 で完了し、従来の細菌培養検査(2日以上必要)よりも圧倒的に迅速 に結果を得ることができます。



「バクテリオファージ」の特性を活かした高精度検査

バクテリオファージとは、特定の細菌のみを攻撃するウイルス であり、地球上で最も多い生命体とされています。

マクマスター大学のゼイナブ・ホセイニドゥース准教授 (Zeinab Hosseinidoust, PhD)は、「バクテリオファージは、長年にわたり感染症治療のために活用されてきました。今回はその能力を利用し、細菌の検出 という新たな用途を開発しました」と述べています。

バクテリオファージの利点は、特定の細菌にのみ反応する高度な特異性 です。

「バクテリオファージはあらゆる生物のドアをノックできますが、特定のドア(細菌)にしか入らないのです」 と、カルロス・フィリペ教授 (Carlos Filipe, PhD) は説明しています。

この特性により、新しい検査技術は 低濃度の細菌でも正確に検出できる のです。

 

食品・医療・環境分野での活用—食中毒や感染症の早期検出が可能に!

本技術は、以下の分野での活用が期待されています。

 

食品安全 

食中毒菌(大腸菌、リステリア菌、サルモネラ菌) の迅速検出

食品工場やスーパーマーケットでの簡易検査が可能に

例:最近のカナダの植物性ミルクのリステリア汚染(死者2名・感染者10名) のようなケースでの早期発見に貢献

 

医療診断

尿路感染症(UTI)の家庭用検査

 

診察・検査待ちの時間を削減し、感染の早期治療を可能に

「今は尿路感染症を疑った場合、診察を受け、数日待つ必要があります。しかし、この技術なら家庭で数時間で結果が得られます。」とトヒド・ディダー准教授 (Tohid Didar, PhD)は語りました。

 

環境検査

飲料水・湖水の安全性検査

上水道未整備地域(カナダでは12%の国民がパイプ水道を利用できない) での汚染確認

実際に、ハミルトン・ヘルス・サイエンス(Hamilton Health Sciences) の患者尿サンプルや湖水サンプルを用いた実験で、従来のラボテストと同じ正確な結果が得られた ことが確認されています。

 

商業化への展望—市場導入に向けた課題と今後の計画

研究チームは現在、商業パートナーとの協力 を模索しており、規制当局の承認を得て市場に投入する準備を進めています。 

論文の筆頭著者であるハンナ・マン(Hannah Mann, PhD候補生) は、「適切な承認とパートナーシップを確立できれば、この技術は広範囲で活用される可能性があります」と述べています。 

また、本技術は バクテリオファージとDNAプローブを変更することで、あらゆる細菌に適応可能 であり、将来的には 血液検査や医療診断のさらなる革新 にも寄与する可能性があります。

 

[News release] [Advanced Materials article]

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