COVID-19の原因ウイルスを含む呼吸器系ウイルスに対して、体が誇張された炎症反応を起こす肺炎を抑止するための情報を、あるウイルスタンパク質が提供している可能性がある。そのウイルスタンパク質とは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のNS2であり、ウイルスがこのタンパク質を欠く場合、人体の免疫反応は誇張された炎症が始まる前にウイルスを破壊できることが研究で明らかになった。ワシントン州立大学獣医学部で行われたこの研究は、2022年1月18日、MBio誌に掲載された。このオープンアクセス論文は「ヒト呼吸器シンシチアルウイルス NS2タンパク質のBeclin1タンパク質の安定化およびISGylationの調節によるオートファジーの誘導(Human Respiratory Syncytial Virus NS2 Protein Induces Autophagy by Modulating Beclin1 Protein Stabilization and ISGylation)」 と題されている。
RSVは、COVID-19の原因となったSARS-CoV-2ウイルスなど他の呼吸器系ウイルスと同様に、ガス交換を担う肺細胞に感染し、その細胞を工場としてさらにウイルスを作り出する。この細胞でのウイルスの増殖が制御できなくなると、細胞が破壊されて激しい炎症が起こり、肺炎などの肺の病気になり、時には死に至ることもあるのだ。
この研究を率いたWSUのポスドク研究員、Kim Chiok博士は、「炎症がひどくなると気道が詰まり、呼吸が困難にながる」「これが、このような長期的で重度の炎症反応を持つ人々が、肺炎になって、呼吸の助けを必要とする理由であり、病院でICUに入ることになる理由なのだ。」と述べている。
Chiok博士とWSUの仲間の研究者達は、RSVのような呼吸器系ウイルスが、どのように細胞内に留まるのかを理解することによって、そのサイクルを断ち切るための枠組みを築いた。国立アレルギー感染症研究所によると、RSVは主に乳幼児、小児、高齢者、免疫不全者において、年間16万人の死亡の原因となっている。
この研究は、WSUの獣医微生物学および病理学研究ユニットの一員であるSantanu Bose教授の研究室で実施された。ペルー出身のフルブライト奨学生でWSUで博士号を取得したChiok博士は、過去2年半をBose研究室で過ごし、ウイルスと宿主の戦いを制御するメカニズムを探求した。
彼らはまず、さまざまなウイルスタンパク質をコードする遺伝子を欠いたウイルスを使い、野生株のウイルスと比較することによって、ウイルスタンパク質の機能を決定した。
「ウイルスには一連の道具があり、複数の機能を持つ道具もある。我々は、本質的にこれらの道具を取り去ることによって、これらの道具について学ぼうとした。」とChiok博士は語っている。これらの道具とは、異なるウイルスタンパク質だ。
Chiok博士は、ウイルスのNS2タンパク質が、ウイルス感染時の免疫防御を調節する細胞内プロセスであるオートファジーの主要な制御因子であることを突き止めた。オートファジーは、Beclin1として知られる細胞内タンパク質によって媒介される。
ウイルスが細胞内に侵入すると、Beclin1はその脅威を認識し、細胞から排除することができる。Beclin1は、ISGylationと呼ばれるプロセスを通じて、特定の小さな遺伝子タンパク質に付着することによってこれを行う。まるで、Beclin1が鎧を身にまとっているようだと、Chiok博士は述べている。
RSVのNS2タンパク質がBeclin1からこの「鎧」を取り除いてしまうことで、ウイルスが細胞内に留まり、複製し、他の細胞に拡散して損傷を与え、体内で過剰な炎症反応が起こり、肺炎などの気道疾患に至ることが明らかになったのだ。NS2タンパク質がなければ、ウイルスはBeclin1によって日常的に破壊される。
「ある意味、NS2が細胞の免疫防御機構を調節する能力を無効にしているのだ」「このコンセプトは、A型インフルエンザウイルスやSARS-CoV-2などの他の呼吸器系ウイルスにも応用できる可能性がある。」と、Chiok博士は述べている。
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蛍光顕微鏡を使って、組換え呼吸器合胞体ウイルスに感染した細胞を識別しているKim Chiok博士
BioQuick News:Respiratory Viruses That Hijack Immune Mechanisms May Have Achilles’ Heel



