ラパマイシン(免疫抑制薬)を投与された一部の患者が糖尿病の様な症状を発症する理由を、Dana-Farberガン研究所の科学者チームが発見した。ラパマイシンは臓器拒絶反応を防ぐために幅広く使用され、さらに抗がん作用もあり、老化を遅らせる可能性もあるため、ガン治療への使用を臨床治験中でもある。しかし、患者の約15%は薬剤服用後にインスリン抵抗性およびグルコース不耐性を発症し、この理由は今まで不明瞭なままであった。

 

2012年4月4日付けのCell Metabolism誌に掲載された本研究では、通常のマウスでラパマイシンを与えられたものはインスリンシグナル伝達が低下するため、血糖を調節することが困難であったと報告されている。インスリンシグナル伝達はYY1タンパク質の活性化により引き起こされる。このYY1タンパク質が筋肉から“ノックアウト”された動物は、糖尿病の様な症状を発症することはなかった。この結果は、正常なインスリン機能の損失の原因がYY1にあることを表している。


本知見の意味することは、医師はラパマイシンと共に抗糖尿病薬も与えることを考慮するべきであると言う事だと、本研究の責任著者、ペレ•プレイグセルペル博士は述べる。本結果はさらに、ラパマイシンの寿命を延ばす効果を期待している者達に対して注意を促す。ラパマイシンおよび関連化合物のアンチエイジング効果については「糖尿病リスクの増加を考慮する必要がある」と、プレイグセルペル博士は語る。ラパマイシンはイースター島で発見されたバクテリアに由来する薬剤であり、移植患者の免疫抑制剤として1999年にFDAにより認定された。その作用の一つが、細胞内のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)シグナル経路の抑制である。mTOR経路は細胞の成長、増殖、生存および運動性に欠かせないものであり、mTOR活動の上昇は多くのガンに見られる特徴である。ラパマイシンおよび関連薬はとりわけ腎臓癌、脳腫瘍、そしてマントル細胞リンパ腫で臨床試験されている。

興味深いことに、ラパマイシンはイーストおよびハエ、そして哺乳類において寿命を延ばし、ガンやアテローム動脈硬化症など加齢に伴う疾患を遅らせると、いくつかの研究で見られている。しかし、有害な糖尿病前発症リスクの増加は懸念されており、謎のままであった。プレイグセルペル博士と研究チームは2007年のNature誌にて、mTORが骨格筋のミトコンドリアを増加させることを発表している。ラパマイシンでmTOR活性を抑制することが、糖尿病状態につながったのである。この研究はさらに、シグナル経路においてmTORよりも下流に存在するタンパク質がYY1であることを明らかにした。YY1は転写因子であり、遺伝子発現をコントロールするタンパク質である。

「我々はYY1が糖尿病作用の原因かもしれないと考えたのです。」と、プレイグセルペル博士は述べる。ラパマイシンによるYY1活性の増加は、筋肉がグルコースを取り上げ、血糖値を安定させるために必要なインスリンおよび関連ホルモンの産生を抑制する可能性がある。この考えをテストするため、研究チームは骨格筋でYY1遺伝子およびタンパク質を欠いたマウスを繁殖させた。これらのマウスにラパマイシンを与えた所、筋肉のグルコース取り込みにもインスリンシグナル伝達にも影響は見られなかった。これらのマウスはラパマイシンによる糖尿病作用に対して免疫をもっていたのである。研究チームの目標は、ラパマイシン治療による糖尿病作用が少数の患者に起こる理由を明らかにすることである。可能性の一つとしては食事因子が関連していると、プレイグセルペル博士は語る。

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