兵庫県神戸市の理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの研究チームは、クローン羊のドリーを生み出したのと同じ技術を用い、正常な寿命を持ち、永久的にクローン化できる健康なマウスを生み出す方法を突き止めた。この研究報告は、2013年3月7日付「Cell Stem Cell」の巻頭を飾っている。若山照彦博士の率いるチームが2005年に始めた実験では、体細胞核移植 (SCNT) と呼ばれるテクニックを用い、オリジナルの「ドナー」マウスから25世代のクローニングを繰り返し、合計581匹のマウスを生み出した。
SCNTは、クローンを作るのによく用いられているテクニックで、卵核を取り除いた生きた卵子に、クローンの元となる個体の遺伝子情報を持った細胞核を植え付けることで、その個体のクローンが育つ。このテクニックは実験動物や家畜に適用して実績を積んでいるが、これまで低い成功率や、哺乳動物で、クローンからさらにクローンを作る再クローン回数の限界などSCNTの技術的な限界を克服することができず、ネコ、ブタ、マウスでは再クローンは2回から6回の間が限界だった。
若山博士は、「この再クローン回数の限界は、一つの可能性として、遺伝子的な、あるいは後成遺伝子的な異常が世代を重ねるごとに積み重なるためと考えられる」と述べている。DNAそのものには変化をもたらさない後成遺伝子の変化、あるいはDNA機能の修飾を防止するため、若山博士の研究チームは、細胞培地にヒストン・デアセチラーゼ阻害薬を加えた。その結果、このテクニックでクローニングの効率が6倍も改善された。SCNT作業の各段階で効率が改善された結果、マウスのクローンを成功率の低下なしに25回繰り返すことができた。この方法で生み出された健康なクローン・マウス581匹はすべて繁殖能力があり、健康な子マウスを産んだだけでなく、正常に受精出産したマウスとほぼ同じ2年という正常な寿命で生存した。
この研究報告の筆頭著者、若山博士は、「この実験の結果から、クローン化を繰り返してもマウスに後成遺伝子や遺伝子の異常の積み重ねが起きなかったことが分かる。畜産や種保存などの目的で優れた質の動物を大規模に作り出さなければならない場合には、このテクニックを役立てることができるのではないか」と述べている。2008年、若山博士は、SCNTテクニックを使って16年間冷凍してあったマウスの体からクローンを作り出し、その研究が大きく報じられた実績がある。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Toward Unlimited Cloning: Japanese Scientists Make 25 Generations of Mouse Clones



