無作為化第3相臨床試験MA.17Rで、letrozole (商品名Femara) を使ったアロマターゼ阻害薬 (AI) 療法を5年から10年に引き延ばすことで閉経後の早期乳がんに対する治療効果が高まることを突き止めた。
以前にtamoxifenを投与されたことがあり、その後5年間のAI療法を受けた乳がん患者は、さらに5年間のletrozole投与を受けることで、プラセボ投与患者に比べて再発率を34%引き下げることができた。

 

この試験はCanadian Cancer Trials Groupが主導し、Canadian Cancer Trials Groupの参加で行われた。

この研究成果は、イリノイ州シカゴ市で開催された2016 American Society of Clinical Oncology (ASCO) 年次総会 (6月3日-7日) の6月5日 (日曜日) の本会議において、同年次総会で発表された5,000件を超えるアブストラクトのうち、治療行為でもっとも大きな影響を与えることになると評価された4件の研究の一つとして発表された。

この研究論文の筆頭著者で、マサチューセッツ州ボストン市のMassachusetts General Hospital, Breast Cancer ResearchのDirectorとHarvard Medical SchoolのProfessor of Medicineを兼任するPaul Goss, M.D., F.R.C.P., Ph.D.は、「ホルモン受容体陽性の早期乳がん患者は不明な再発リスクを負っている。この研究で、アロマターゼ阻害薬療法を引き延ばすことにより、乳がん再発リスクをさらに引き下げられることを実証し、患者や医師に治療の方向性を与えることができた。また、AI療法を延長することで、反対側の健康な乳房に対してもかなり乳がんを予防できることも示された」と述べている。


MA. 17Rの試験では、2つのグループの全生存率に大きな違いはなかったが、Dr. Gossは、ホルモン受容体陽性タイプの乳がんは緩慢な慢性再発性という性質上、臨床試験では全生存率を確定するのは困難だと指摘している。そのため、乳がんのホルモン療法は、ほとんどが無病生存期間の向上だけで規制機関の認可を得ている。また、患者の総合的な生活の質は、2つのグループでほとんど違いがなかった。


身体役割機能ではプラセボに有利な違いも見られたが、臨床的に有意味とは考えられなかった。MA. 17Rの患者報告分析の筆頭著者であり、カナダのCentre Hospitalier Universitaire de Quebec の研究員を務めるJulie Lemieux, M.D.は、「かなりの数の早期乳がん患者が長期生存者であり、ホルモン療法は長期になるため、患者の気持ちを知ることは非常に大切である」と述べている。


スタディ
MA.17R臨床試験の2つの互いに関連したアブストラクトのデータが年次総会で発表されることになっていた。
一つは、安全性と有効性に関する報告 (LBA1 - Plenary)
もう一つは患者の生活の質に関する報告(LBA506)

だった。

この試験では、初期治療として、またはtamoxifen治療を受けた後の治療として3種類のAI治療のいずれかを5年間受けたことのある閉経後の女性1,918人が参加した。患者の試験参加条件は、AI治療完了後2年までだったが、実際にはAI治療完了後6か月以内にこの試験でletrozoleまたはプラセボの投与を受けた患者が約90%にのぼった。患者報告による生活の質は、心身の健康両面の幅広くカバーする標準的なSF-36調査票と閉経の問題のみを扱うMNENQOL調査票を用いて測定した。1,918人の研究参加者のうち、1,428人が初回の生活の質アセスメントを完了する資格を備えていた。同じ調査を12、24、36、48、60か月でも行い、85%を超える女性がフォローアップの調査票をすべて完了した。


主要結果
Impact on Risk of Recurrence and New Breast Cancer (LBA1 – Plenary、再発リスクと新規乳がん発症への影響): letrozole治療を延長したグループでは乳がん再発率が34%低下した。対側乳がんの年間発症率は、letrozoleグループが0.21%、プラセボ・グループが0.49%とはっきりとした違いがあり、乳がん予防効果もあることが示されている。5年のフォローアップでの乳がん無疾患率は、letrozoleを投与された患者で95%、プラセボを投与された患者で91%だった。また、5年全生存率は、プラセボ投与患者で93%、letrozole投与患者で94%であり、統計的に有意味ではなかった。

Quality of Life Findings (LBA506、生活の質調査結果): 総じて、5年間letrozole投与を受けた患者とプラセボ投与を受けた患者とでは、生活全般の質にも、閉経に関する生活の質にも有意味な違いはなかった。また、身体役割機能はプラセボ投与患者に有利な違いが見られたが、臨床的に有意味と見なされるほどの違いではなかった。2012年には、乳がんと診断された後で最低5年生存した女性は全世界で600万人を超えている。その女性らは大多数がエストロゲン受容体陽性乳がんであり、今回の研究成果を心待ちにしていることだろう。


ASCOの見地
ASCOの乳がん専門医、Harold J. Burstein, M.D., FASCOは、「このデータは、世界の何百万人ものエストロゲン受容体陽性乳がん患者にとって重要なデータであり、一般に用いられている化学療法の期間を延ばすことでがんの再発リスクを引き下げられるばかりか、続発性がんも予防できることを示している。どんな治療でも10年続けるというのはかなり長い期間だ。しかし、幸いなことにほとんどの女性は、ほとんど副作用を経験することもなく長期の治療によく耐えている。これからは、患者は医師と話し合い、情報を得た上で補助ホルモン療法を延長するかどうかを決めることができる」と述べている。

この記事は、ASCO 2016 Annual Meetingのプレスリリースに基づいている。

原著へのリンクは英語版をご覧ください
Ten Years of Hormone Therapy Reduces Breast Cancer Recurrence Without Compromising Quality of Life

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