2026年5月、コンゴ民主共和国(DRC)とウガンダで、エボラウイルス属に近縁な「ブンディブギョウイルス(Bundibugyo virus: BDBV)」による新たなアウトブレイクが発生しました。国際的な研究チームがこの流行株のゲノムを解読した結果、過去の流行株の再燃ではなく、動物から人への新規のウイルス飛び火(スピルオーバー)である可能性が高いことが明らかになりました。この研究成果は、2026年8月10日に「Nature Medicine」誌にオープンアクセスで掲載されました。論文タイトルは「Emergence of a Bundibugyo Virus Variant in the 2026 Outbreak in the Democratic Republic of the Congo and Uganda(コンゴ民主共和国およびウガンダにおける2026年アウトブレイクで出現したブンディブギョウイルス変異株)」です。
研究を主導したのは、コンゴ民主共和国・キンシャサの国立生物医学研究所(Institut National de Recherche Biomédicale: INRB)のエイドリアン・アムリ=アジザ氏(Adrienne Amuri-Aziza)らのチームで、ベルギーのアントワープ熱帯医学研究所(Institute of Tropical Medicine)やルーヴァン・カトリック大学(KU Leuven)、ウガンダ・ウイルス研究所(Uganda Virus Research Institute: UVRI)、両国保健省なども加わった国際共同研究です。
研究チームは、DRCとウガンダの患者検体から得られたウイルスゲノムを合計22例分解読し、系統解析を実施しました。その結果、今回の流行株は、2007年のウガンダでの流行株や2012年のDRCでの流行株とは異なる独立したクラスターを形成していることが判明しました。これは、過去に感染が広がった株が休眠状態から再活性化したのではなく、自然界の宿主(コウモリなどが疑われています)から新たに人への感染が起きた「新規のスピルオーバーイベント」であることを強く示唆しています。
また、ゲノム解析からは、DRC国内で発生した感染がウガンダへ持続的に伝播していった経過も追跡できました。研究チームは今回の発見を踏まえ、あらゆるエボラウイルス属を検出できる「パン・オルソエボラウイルスアッセイ(pan-Orthoebolavirus assay)」を用いた診断体制と、現地に近い場所でゲノム解読を行える分散型の検査能力を強化する必要性を強調しています。
エボラウイルス属に含まれるウイルスによる出血熱は致死率が高いことで知られ、早期の検知と流行株の系統的な位置づけの把握は、アウトブレイクの拡大を防ぐための封じ込め戦略(接触者追跡、治療センターの設置、コミュニティとの連携など)を適切に選択する上で極めて重要です。今回のように、ゲノム情報に基づいて「既知株の再燃」なのか「新規のスピルオーバー」なのかを迅速に見極めることは、今後のアウトブレイク対応の初動を左右する重要な情報となります。
研究チームは、今後も監視体制の維持とコミュニティの関与、医療対策の継続的な整備が不可欠だとしています。
