症状が出る前に脳で何が起きているのか?

VIB-アントワープ大学(VIB-UAntwerp)分子神経学センターの研究チームは、希少な小児脳疾患であるKCNQ2関連発達性てんかん性脳症(KCNQ2-DEE: KCNQ2-related developmental and epileptic encephalopathy)のモデルにおいて、脳ネットワークの発達がどのように変化するかを可視化することに成功しました。研究チームは、経時的な画像診断技術を用いることで、行動症状が現れるかなり前の段階で、脳の各領域間のコミュニケーションや接続方法に違いがあることを観察しました。

この研究は2025年10月24日付のeBioMedicine誌に、「Imaging Brain Development in a KCNQ2-Developmental and Epileptic Encephalopathy Mouse Model: Identifying Early Biomarkers for Functional and Structural Brain Changes(KCNQ2発達性・てんかん性脳症マウスモデルにおける脳発達の画像化:機能的および構造的な脳変化に関する早期バイオマーカーの特定)」というタイトルで掲載されました。

KCNQ2-DEEは、新生児に発症する希少かつ重篤な神経疾患です。この疾患を持つ子どもたちは、通常、生後数日以内にけいれん発作(てんかん)を発症し、その後も学習や運動の困難に直面し続けます。この疾患は、正常な脳活動を妨げるカリウムチャネル遺伝子の変異によって引き起こされます。

 

「構造」ではなく「機能」の変化

サラ・ウェックハイゼン博士(Sarah Weckhuysen, PhD)が率いるチームは、この疾患が脳の発達にどのような影響を与えるかを調査するため、同じ遺伝的欠陥を持つマウスを用いて、成長初期段階における脳の機能と構造を可視化しました。

核磁気共鳴画像法(MRI: magnetic resonance imaging)と陽電子放出断層撮影(PET: positron emission tomography)を用いた解析の結果、脳に生じている変化は物理的な組み立て(構造)ではなく、脳領域がいかに相互作用するかという「機能」面にあることが判明しました。

この発達パターンは、自閉症や統合失調症などの他の神経発達障害で観察されるものと似ています。このことは、KCNQ2で見られるようなイオンチャネル機能の乱れが、脳回路の成熟プロセスに広範な影響を及ぼしている可能性を示唆しています。

重要なのは、これらのネットワークの混乱が、いかなる行動症状が出るよりもずっと前に現れていたことです。これは、KCNQ2の変異が単に発作を引き起こすだけでなく、脳の配線(配線図)が発達する過程そのものを妨げていることを示しています。

 

早期介入に向けた大きな一歩

VIBおよびアントワープ大学の主任研究員であり、神経科医でもあるサラ・ウェックハイゼン博士は、次のように述べています。 「脳がどのように発達するかを可視化することで、この疾患がどのように進行するのか、より明確な展望が得られました。これにより、早期治療がいつ、どこで最も効果的であるかを判断する助けになるでしょう」

サラ・ウェックハイゼン博士のチームは、数年前からKCNQ2関連脳症の生物学的メカニズムを研究してきました。以前の研究では、すでにある抗精神病薬が、この疾患に関与するカリウムチャネルの調節因子となる可能性も特定しています。

ウェックハイゼン博士は、「これらの混乱がいつ、どのように始まるのかを理解することは、単なる発作の抑制にとどまらない、早期介入法の開発において極めて重要です」と締めくくっています。

写真:サラ・ウェックハイゼン博士(Sarah Weckhuysen, PhD)

[News release] [eBioMedicine article]

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