AIが切り拓く高精度なゲノム編集技術

ゲノム編集などの生化学的変換において、高い特異性を達成することは、研究や治療において非常に重要です。特異性を高めることで、効果的かつ正確な編集結果が保証されるからです。しかし、現在の手法は、活性と特異性のトレードオフ、高い労働力、そして低い成功率といった制約を抱えています。

この課題を解決するため、ハオウェイ・メン(Haowei Meng)やダリ・リ(Dali Li)博士、チェンチー・イー(Chengqi Yi)博士らの研究チームは、新しい画期的な手法を開発しました。彼らが2026年7月22日にNature誌で発表した研究論文のタイトルは、「AlphaFold3ベースの接触モデリングを用いた精密なDNA塩基編集(Precise DNA base editing using AlphaFold3-based contact modelling)」です。

ContactSeekの誕生

本研究においてメンらは、人工知能(AI: Artificial Intelligence)を駆使した新しいフレームワーク「ContactSeek」を発表しました。この手法は、タンパク質構造予測AIであるAlphaFold3(AF3: AlphaFold3)が予測する接触確率を利用して、ゲノム編集ツールの特異性を向上させるというものです。

リ博士とイー博士らの研究チームは、Cas9-TadAのアデニン塩基エディター(ABE: Adenine Base Editors)を実例として用い、ゲノム全体のオフターゲット(意図しない編集箇所)をマッピングし、そのオフターゲットDNA配列をAF3に読み込ませました。その結果、予測された3次元構造よりも、接触確率の方がオンターゲット(標的)とオフターゲット複合体間の相互作用の違いを検出するのに敏感であることが判明しました。

圧倒的な精度と今後の展望

ContactSeekは、接触確率とシーケンスベースのオフターゲットシグナルを関連付けることで、「コンセンサス接触領域」を特定しランク付けを行いました。これは、DNAやガイドRNA(gRNA: guide RNA)に対して一貫した接触変化を持つ、隣接するCas残基を指します。さらに、ContactSeekはその領域内から特異性を決定する重要な残基をピンポイントで特定することに成功しました。

このツールはモジュール式に適用することも可能であり、TadA8eデアミナーゼにおける重要な残基の特定にも活用されました。ターゲットアンプリコンシーケンスやゲノムワイドプロファイリングなどの様々な検証によって、特異性が大幅に向上したことが確認されています。Cas9とTadA8eの2つの変異を組み合わせた最高の変異体は、既存の既知の高精度なアデニン塩基エディターを上回る性能を示しました。

また、このフレームワークは、Cas12aベースのシトシン塩基エディター(CBE: Cytosine Base Editors)にも一般化して適用できることが確認されています。全体として、このフレームワークは特異性向上のためにカスタマイズされたAF3主導のモデルを提示しており、構造と機能の次元を統合することで、ゲノム編集ツールの精度を向上させるための新たなパラダイムを確立しました。

 https://www.nature.com/articles/s41586-026-10794-z

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