人工知能を活用した新たな創薬モデル、希少疾患への新しい希望を提案

新たに開発された人工知能(AI)モデル「TxGNN」は、数千の未治療疾患を含む膨大な病気に対する既存薬からの治療法を提案。
未学習の病気にも応用可能で、提案した治療法の説明も提供。
これにより、従来の創薬よりも迅速かつ低コストで、副作用の少ない治療法の開発が期待される。
現在、世界には7,000以上の希少・未診断疾患が存在し、合計で約3億人に影響を及ぼしています。しかし、FDA(米食品医薬品局)に承認された薬があるのは5~7%に過ぎず、多くの疾患は未治療または十分に治療されていません。

こうした状況を打破するため、ハーバード大学医学大学院(HMS)の研究者らが開発したAIモデル「TxGNN」が注目されています。このモデルは、既存薬を利用して新たな治療法を発見し、特に希少疾患や未治療疾患の治療に貢献することを目指しています。

TxGNNモデルの特長と成果

2024年9月25日にNature Medicine誌に発表されたこの研究では、TxGNNが既存薬8,000種類から17,080の疾患に対する治療候補を特定しました。その多くは未治療の疾患であり、これまでのAIモデルの中で最も多くの疾患をカバーしています。また、TxGNNは、既存の薬が特定の病気に対してどのような副作用や禁忌があるかを予測する能力も持ち、従来の試行錯誤的な薬物評価方法を改善します。

研究チームはこのツールを無料で公開し、特に治療オプションの少ない疾患に取り組む臨床研究者らに活用してもらいたいと考えています。

既存薬の再利用が持つ可能性

既存薬を利用する創薬手法は、開発コストや時間を削減できる魅力的な方法です。FDAが承認した薬の約30%が承認後に新たな適応症を取得しており、長年の使用を経て意外な効果が発見されるケースも少なくありません。しかし、これまでの再利用アプローチは、偶然の発見や医師の直感に頼ることが多く、戦略的とは言えませんでした。

「TxGNNは、既存の薬を活用して治療法を見つける戦略的なアプローチを提供します」と、マリンカ・ジトニク博士(Marinka Zitnik, PhD)は述べています。

TxGNNの進化した診断能力

従来のAIモデルが特定の疾患に特化していたのに対し、TxGNNは複数の疾患に共通する特徴を見つけ出すことで、新しい治療法を提案します。このアプローチは、人間の医師が利用可能な知識すべてを使って推論する方法に近く、膨大なデータを駆使して、新たな治療候補を発見します。

現場での実用化と次のステップ

研究者らは、TxGNNが提案する治療法を利用することで、疾患の治療選択肢を大幅に拡大できると期待しています。ただし、実際に治療として利用するには、投与量やタイミングなどの追加評価が必要です。

今後、希少疾患財団などと連携し、具体的な治療法の開発を進める計画です。

[News release] [Nature Medicine article]

  

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