「APOE3 Christchurch遺伝子変異を持つ家系の27名が、持たない家系よりもアルツハイマー病の発症が5年遅れることが判明しました。この遺伝子変異は新たな治療法の鍵となるのでしょうか?」
マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)やその他の研究機関からなる国際チームは、40代で発症する早期発症型アルツハイマー病に遺伝的にかかりやすい1000人以上の家族を対象に、保護的な遺伝子変異を探してきました。
2019年、研究者らは「クライストチャーチ変異(Christchurch variant)」がアルツハイマー病に対して保護的である可能性があると報告しました。この変異を2つ持つ家族の一員が、予想されていたよりも30年遅れて認知機能障害を発症したのです。今回の研究では、このAPOE3 Christchurch変異を1つ持つだけでもある程度の保護効果があることが新たに示されました。これは、新たな治療標的を示唆する重要な発見です。
2024年6月19日にThe New England Journal of Medicineに発表された研究によると、この遺伝子変異を1つ持つ27名の家族が、アルツハイマー病の発症が遅れることが示されました。この論文のタイトルは「APOE3 Christchurch Heterozygosity and Autosomal Dominant Alzheimer’s Disease(APOE3 Christchurchヘテロ接合性と常染色体優性アルツハイマー病)」です。
マサチューセッツ総合病院の臨床神経心理学者であるヤキール・T・キロス博士(Yakeel T. Quiroz, PhD)は「この発見は、認知機能低下や認知症の遅延の可能性を示唆しており、効果的な治療法の開発に役立つと期待しています」と述べています。
キロス博士や研究チームは、コロンビアの最大の既知の遺伝子変異「パイサ変異(Presenilin-1 E280A)」を持つ家族と協力して研究を進めてきました。この家族には約6000人の血縁者がいて、そのうち約1200人がこの変異を持っています。パイサ変異を持つ人々は、40代で軽度の認知障害を発症し、50代で認知症を発症し、60代で認知症の合併症で死亡することが一般的です。
今回の研究では、クライストチャーチ変異を1つ持つ家族27人が、持たない家族よりも認知機能障害の発症が5年遅れ、認知症の発症も4年遅れることが示されました。
研究チームは、コロンビアの家族の1077人の子孫を評価しました。その中から、パイサ変異とクライストチャーチ変異を1つ持つ27人を特定しました。これらの家族は、変異を持たない家族に比べて平均で52歳で認知機能障害を発症し、47歳で発症したグループと比較されました。
今回の研究は、1つの拡大家族に限定されているため、さらなる研究が必要です。しかし、この発見は新たな治療法の開発に向けた重要な一歩となる可能性があります。
この研究は、アルツハイマー病の新たな治療法の可能性を示唆する重要な発見です。APOE3 Christchurch遺伝子変異を1つ持つだけでアルツハイマー病の発症を遅らせることができる可能性があります。さらに大規模で多様なサンプルを用いた研究が、これらの発見をさらに裏付けることが期待されます。



