サンパウロ州立大学の研究:凝縮系物理学の応用でタンパク質の細胞内分離を解明
サンパウロ州立大学の研究者らが、凝縮系物理学の概念を用いて、細胞内のタンパク質区画化を説明し、新しい「細胞的グリフィス相」を提唱しました。この研究は、2024年8月15日に学術誌「Heliyon」に掲載され、論文タイトルは「Cellular Griffiths-Like Phase(細胞的グリフィス相)」です。主著者はルーカス・スクイランテ(Lucas Squillante)博士課程学生、責任著者は同大学地球科学・精密科学研究所(IGCE-UNESP)の教授、マリアノ・デ・ソウザ博士(Mariano de Souza, PhD)です。
研究概要と背景
物理学における二物質系モデルでは、各構成要素の比率や相互作用を考慮する古典的混合理論が使用されます。この理論は、過冷却水における高密度相と低密度相の共存や、モット転移における金属相と絶縁体相の共存などを説明します。このアプローチに基づき、研究者らは磁気グリフィス相(magnetic Griffiths phase)を細胞環境に適用。細胞内タンパク質の液液相分離によって形成される「レア領域」を解析し、タンパク質ドロップレット形成の動態が著しく低下するメカニズムを明らかにしました。
研究の方法と発見
研究では以下の熱力学的ツールを活用しました:
グリューナイゼンパラメーター
フローリー・ヒギンズモデル
アヴラモフ=カサリーニモデル
これらを用いて、タンパク質/溶媒濃度の変化や相分離近傍での動態遅延を解明しました。また、研究者らは細胞的グリフィス相を、生命の起源や初期生物の出現に関連付けました。特にアレクサンドル・オパーリン(Aleksandr Oparin)の理論を引用し、動的に安定なコアセルベートだけが進化する可能性を示唆しました。
疾患との関連性と応用可能性
液液相分離はがん、白内障、神経変性疾患、さらにはCOVID-19など多様な疾患に影響を及ぼすことが知られています。例えば、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のNタンパク質のコアセルベート化は、免疫応答を抑制する可能性があります。また、がん治療においてはFSP1(フェロトーシス抑制タンパク質1)に関連した相分離が有望な治療法として注目されています。
今後の展望
本研究のように物理学と生物学を融合した学際的アプローチは、疾患の管理や治療に大きな影響を与える可能性があります。



