私たちの足元に広がる土の中には、まだ誰も見たことのない無数の微生物が暮らしており、その中には未来の医療を救う「宝物」が眠っているかもしれません。多剤耐性菌が世界的な脅威となる中、新しい抗生物質の開発は急務です。しかし、新薬の源となる細菌のほとんどは研究室で培養できず、その可能性は未開拓のままでした。この長年の壁を打ち破るため、ロックフェラー大学の研究チームが画期的な手法を開発。土から直接DNAを「釣り上げ」、ゲノム情報の中から薬の候補を見つけ出すことに成功しました。この発見は、地球上に潜む謎の存在「微生物ダークマター」への扉を開く、まさにブレークスルーと言えるでしょう。

細菌は長年にわたり、命を救う抗生物質の重要な供給源であり続けてきました。しかし、そのほとんどの種は研究室で培養することができず、多剤耐性菌がますます深刻な脅威となる中でも、その治療薬としての潜在能力は未開発のままでした。

この長年の実験的な障害に対し、ロックフェラー大学の遺伝子コード化低分子研究室のチームが最近、解決策を開発しました。この方法は、停滞気味の抗生物質開発に新たな命を吹き込む可能性があります。それは、土壌から直接、細菌のDNAの長大な配列を抽出し、バイオインフォマティクスを駆使してその中から抗生物質の候補を選び出すというものです。

最近の論文で、彼らはこの手法によって、これまでに知られていなかった数百のゲノムと、2つの有望な広域スペクトラム抗生物質をすでに発見したことを報告しています。この研究は、地球上の至る所に潜む、いわゆる「微生物ダークマター」にアクセスする上での画期的な進歩を示すものです。2025年9月12日に『Nature Biotechnology』誌で公開されたこの論文は、「Bioactive Molecules Unearthed by Terabase-Scale Long-Read Sequencing of a Soil Metagenome(土壌メタゲノムのテラベーススケール・ロングリードシーケンシングによって発掘された生理活性分子)」と題されています。

ロックフェラー大学のニューススタッフは、研究室を率いるショーン・F・ブレイディ(Sean F. Brady)博士と、論文の筆頭著者であるヤン・ブリアン(Jan Burian)博士に、この発見が微生物学における発見の新時代をどのように切り開く可能性があるかについて尋ねました。

 

――先生の研究室では何十年にもわたって土壌微生物を研究してこられました。なぜ、これが研究の大きな焦点となっているのでしょうか?

ショーン・ブレイディ博士: 土ほど身近な場所はありません。子供の頃に遊び、人類は何千年もの間、農業を営んできました。しかし、多くの点で、そこはまだ未知の領域(テラ・インコグニタ)なのです。世界中には微生物の生態系が広がっており、それらはおそらく私たちの生活に、まだ理解されていない劇的な影響を与えています。細菌は気候、農業、健康、そして生物地球化学的循環を根底から形作っている可能性がありますが、私たちがこれまで目にすることはおろか、研究することさえできなかった種が非常に多く存在するのです。私の探求心の一部は、未知を探求したいという欲求から来ています。しかし、純粋に実用的な理由もあります。微生物は私たちの抗生物質のほとんどの源であり、私は新しい医薬品候補を探索する上での大きな障害を克服したいと考えていました。

ヤン・ブリアン博士: 結果的に、それ以上のものを発見できたことは本当にエキサイティングです。私たちの研究室は主に低分子や新しい抗生物質の発見に取り組んでいますが、微生物が世界の仕組みを理解するのにも役立つことを知っています。自然界における細菌の役割をより良く理解できれば、その影響はバイオテクノロジーや医学の分野を越えて広がっていくでしょう。

 

――何が、こうした発見を妨げていたのでしょうか?

ブレイディ博士: 細菌の大部分は培養不可能であること、これが全体的な問題です。もう一つの問題は、たとえ抗生物質や他の興味深い低分子を産生するはずの細菌のDNAを持っていても、それが研究室で発現するとは限らないことです。この分野が150年間問い続けてきた一つの疑問に対し、私たちはここで強力な解決策の可能性を示せたと考えています。その疑問とは、「世界には我々が見ることのできない未知の微生物が無数にいる。どうすればそれらを観察し始められるのか?」というものです。

 

――新しい手法はどのように機能するのですか?

ブレイディ博士: 私たちの最初の大きなブレークスルーは、ヤンが土壌から非常に大きなDNA配列を抽出する方法を見つけ出したことでした。細菌自体を培養できないのであれば、何とかしてそのゲノムを組み立てる必要がありますが、小さな断片をつなぎ合わせるよりも、大きなDNA鎖を使った方がはるかに簡単です。DNAを手に入れたら、それを利用する方法を見つけ出す必要がありました。そこで、ロングリードシーケンシングを用いてゲノムを明確に読み取りました。そして、そのすべてを何か興味深いもの、つまり、そのDNAを細菌が自然界で作り出すであろう物質に変換したいと考えました。そこで、バイオインフォマティクスを使って遺伝子が何をするかを予測し、予測された分子を合成して実験を行ったのです。

 

――そして、最終的に抗生物質を発見されたのですね?

ブレイディ博士: はい。私たちの研究がエキサイティングなのは、単に新しいものを見ているだけでなく、見つけたものを、潜在的に有用なものに変えることができるエンジンと結びつけている点です。論文では、発見し合成することができた2つの抗生物質候補(うち1つは広域スペクトラム)に焦点を当てていますが、それは氷山の一角にすぎません。私たちは、これらの微生物を一度も培養することなく、そのゲノムに秘められた情報を解き放つための一つのパラダイムを創造しました。今後、さらに多くの発見がもたらされることを期待しています。

 

――これまで知られていなかった微生物種に由来する、いくつかの新しいゲノムも発見されたそうですね。

ブリアン博士: はい、そうです。そしてそのことは、この分野における発見が歴史を通じてどのように進化してきたかという興味深い点を浮き彫りにします。微生物学が始まった当初は、ほぼ完全に顕微鏡観察に基づいていました。目に見える非常に大きな多様性があり、それによって私たちは多くの微生物種の存在を発見しましたが、それらを研究することはできませんでした。そこで、その後の100年間、この分野は細菌の培養へと移行しました。主に人々が病気をより良く理解するために病原菌の研究に関心があったからです。しかし今、私たちは原点に戻ってきました。培養できない細菌を再び見つめているのです。ただし今回は、それらを研究するためのゲノムツールも手にしている、という点が違います。

 

写真:ヤン・ブリアン(左)とショーン・F・ブレイディは、抗生物質耐性が生じにくい可能性のある薬剤候補化合物を検索する方法を考案した。 (Credit: Lori Chertoff)

[News release] [Nature Biotechnology article]

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