エモリー大学の研究チームがこの度、治療困難なうつ病に効く可能性のある炎症抑制薬を発見した。本研究は2012年9月3日付けのArchives of General Psychiatry誌にオンライン掲載された。「炎症は、感染や創傷に対する身体の自然な反応です。しかし長期に渡る、または過度の炎症は、脳を含む身体のいたる所にダメージを与えてしまうのです。」と、本研究の責任著者であるエモリー大学医学部精神医学・行動科学教授、 アンドリュー・H・ミラー博士(M.D.)は説明する。先行研究では、高炎症を有するうつ病患者には抗うつ薬や心理療法など、従来の治療の効き目が低いことが示されている。本研究では、炎症をブロックすることが治療困難なうつ病患者全般に効くのか、あるいは炎症値の高いうつ病患者に特定して効くのかを調べるために行われた。

 


研究には自己免疫疾患および炎症性疾患(関節リウマチや炎症性腸疾患など)を治療する比較的新しい生物学的治療薬、インフリキシマブが使用された。生物学的薬剤は、身体の免疫システムによって生成される物質の効果をコピーする。今回のケースにおける薬剤は、腫瘍懐死因子(TNF)をブロックする抗体であった。TNFは炎症において鍵となる分子で、うつ病患者においてそのレベルが上昇することもあると示されている。研究参加者の全ては広範なうつ病を持ち、従来の抗うつ病薬に適度な耐性を有していた。各参加者は、インフリキシマブまたは非アクティブなプラシーボ治療のいずれかに割り当てられた。

調査員がグループ全体の結果を見た所、薬剤グループとプラシーボグループ間におけるうつ病症状の改善の差は認められなかった。しかし、高炎症値を有する参加者の反応を別に調べた結果、プラシーボに比べてインフリキシマブに対する反応の方がはるかに良かった。本研究では、ほとんどの診療所や病院で利用可能であり、C反応性タンパク質(CRP)を計ることの出来る単純な血液検査によって炎症を計った。CRPレベル高いほど炎症が高く、薬の効く可能性も高いのである。

「簡単な血液検査によって抗うつ病薬の効き目を予測することは、精神医学における聖杯の一つです。血液検査は我々がうつ病の根本的原因であると考える物を計ったのはもちろんのこと、薬のターゲットまで測定したため、これは特に重要です」と、ミラー博士は語る。「これはうつ病における生物学的治療で初めて成功したものです。本研究は精神疾患を治療するために免疫系をターゲットにするという新しいアプローチへの道を開いたのです」と、エモリー大学出身者で現在はトゥーソン、アリゾナ医科大学精神科の准教授であるチャールス・L・レイソン博士(M.D.)は語る。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Targeting Inflammation to Treat Depression

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