miRNAとは、遺伝子の小片であり、遺伝子のオンとオフをどのタイミングで行なうかを調整しており、ヒト細胞は何千ものマイクロRNA(miRNA)を産生していると考えられている。miRNAは正常細胞のコントロールに重要な役割を持っている一方で、疾患にも関わっている。例えば、ある腫瘍では産生量が増加し細胞の増殖に関与する。

 

miRNAが健康や疾患にどのように関与しているのかをより良く理解するには、どのmiRNAがどの遺伝子に作用するのかを正確に知る必要がある。とは言え、その数は膨大であり、例えばたった一つのmiRNAが何百もの遺伝子を制御しているのである。miR-TRAPを使えば、細胞内でmiRNAが標的としている遺伝子を直接同定することが簡単にできる。この技術は、サンフォード・バーンハム医学研究所(サンフォード・バーンハム)の教授でプログラムディレクターであるタリク・ラナ博士とその研究チームにより、2012年5月8日付けのAngewandte Chemie誌国際版で初めて明らかにされた。「この方法は、様々な生理学的条件化におけるいくつもの疾患のmiRNA標的を発見するのに利用できます。


miR-TRAPはRNAフィールドのギャップを埋める橋のようなもので、ガンのような疾患の理解を助け、裏に潜む遺伝子学的な標的を基にして、診断法や治療法を明らかにするのに役に立ちます。新しいハイスループットRNAシーケンス技術によって、多くのmiRNAとその標的が判るようになることは大変重要です。」とラナ博士は語る。

miRNAはDNAに直接結合して遺伝子発現をブロックするのではなく、メッセンジャーRNA(mRNA)に結合してブロックする。mRNAは通常DNAの情報を細胞核から細胞質へ運び出し、そこで配列情報はタンパクへと翻訳される。続いてこれらのmRNAに、RNA由来サイレンシング複合体或いはRISCと呼ばれるタンパクグループが結合する。これはmRNAがコードするタンパクをブロックする働きを持ち、細胞内で広範囲にわたる影響を有する。miR-TRAPは主たる3段階の工程による。即ち、1) 光によって活性化する植物由来分子であるソラレンを結合させた、対象となるmiRNAに対する高感度光活性プローブを作製、2) 長波長UVによる光架橋反応、3) RNAを取り出し、RT-qPCRで解析 という工程となる。言い換えれば、紫外線によって細胞を照射し、miRNAとmRNAのペアを固定化するという事である。そして細胞からRNAを抽出した後で、結合しているmRNAを詳細に解析し、miRNAが標的とする遺伝子を同定する手順となる。

miR-TRAP法は、miRNAの標的を探索する他の方法より、3つの理由で簡単で正確である。1つ目は、miR-TRAP法は、正常或いは疾患生細胞内のmiRNA標的を直接同定する事。2つ目は、mRNA標的化技術が、miRNAの減少だけでなくタンパクへの翻訳量の低減についても、qPCRやマイクロアレイを用いてモニターする事。3つ目は、miR-TRAP法は抗体に依存しないので、非特異的なバックグラウンドノイズが発生せず、データの解読が簡単である事である。

miR-TRAP法を駆使し、Rana博士とポスドクのフリチャ・バイグード博士を含むRana研究室チームは、2つのマイクロRNAが標的とすると思われる13個の分子を見つけた。この方法によって明らかになったのは、既存の標的の確認だけでなく、新たに2つの標的の発見でもあった。「次の目標として私達は様々な疾患モデルにおいて、この方法をどのように適用するかという研究を行なっています。そして、miR-TRAP法が世界中の研究室で標準法として活用される日が到来する事を期待しています。」とRana博士は語る。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:New Technique Captures MicroRNA Targets

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