パーキンソン病の進行を止める鍵?失われた脳細胞の「アンテナ」を回復させる新アプローチ

パーキンソン病の進行を止める鍵?失われた脳細胞の「アンテナ」を回復させる新アプローチ

私たちの脳細胞には、周囲の情報をキャッチするための小さな「アンテナ」が無数に存在することをご存知でしょうか。このアンテナが正常に機能することで、細胞同士はスムーズに情報をやり取りし、私たちの体をコントロールしています。しかし、もしこのアンテナが壊れてしまったら…? 実は、ある特定の遺伝子変異によって引き起こされるパーキンソン病では、まさにそのような事態が神経細胞に起きているのです。今回、スタンフォード大学医学部が主導したマウスによる最新の研究で、この壊れたアンテナを修復し、パーキンソン病の進行を食い止める可能性を秘めた治療法が示されました。 この研究によると、ある単一の遺伝子変異が原因で発症するタイプのパーキンソン病では、神経細胞の死滅を食い止められるかもしれません。この遺伝子変異は、LRRK2(leucine-rich repeat kinase 2: ロイシンリッチリピートキナーゼ2)と呼ばれる酵素を過剰に活性化させます。LRRK2酵素の活性が高すぎると、脳細胞の構造が変化し、神経伝達物質であるドーパミンを作り出すニューロンと、脳の深部にあり運動や意欲、意思決定に関わるドーパミンシステムの一部である線条体の細胞との間の重要なコミュニケーションが妨げられてしまうのです。 「この研究結果は、LRRK2酵素を阻害することで、もし患者様を十分に早期に発見できれば、症状の進行を安定させられる可能性を示唆しています」と、スタンフォード大学医学部のエマ・ファイファー・マーナー教授であり、生化学の教授でもあるスザンヌ・ペフェール(Suzanne Pfeffer)博士は述べています。研究者たちは、MLi-2 LRRK2キナーゼ阻害剤という分子を用いて、過剰に活性化したLRRK2を抑制することができます。この分子は酵素に結合し、その活性を低下させる働きをします。 ペフェール博士は

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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