ゲノム編集の新時代へ。大規模な遺伝子改変を「傷跡なく」実現するPCE技術とは?
まるで文書を編集するように、生物の設計図であるゲノムを自在に書き換える「ゲノム編集技術」。この技術が、これまで不可能だった大規模かつ精密な操作を可能にする、新たなステージへと進化を遂げました。中国科学院、遺伝学・発生生物学研究所のカイシャ・ガオ教授(Caixia Gao)が率いる研究チームは、「プログラム可能な染色体工学(PCE: Programmable Chromosome Engineering)」システムとして知られる2つの新しいゲノム編集技術を開発しました。 2025年8月4日に科学誌Cellにオンライン掲載されたこの研究は、特に植物などの高等生物において、キロベースからメガベース規模に及ぶ、複数タイプの精密なDNA操作を達成するものです。論文のタイトルは「Iterative Recombinase Technologies for Efficient and Precise Genome Engineering Across Kilobase to Megabase Scales(キロベースからメガベーススケールにわたる効率的かつ精密なゲノム工学のための反復的リコンビナーゼ技術)」です。 これまで、部位特異的リコンビナーゼであるCre-Loxシステムは、精密な染色体操作において絶大な可能性を秘めていることが多くの研究で示されてきました。しかし、その幅広い応用は、3つの重大な限界によって妨げられていました。(1) Loxサイトの対称的な性質に起因する可逆的な組換え反応が、目的の編集を元に戻してしまうこと、(2) Creリコンビナーゼが四量体を形成する性質がタンパク質改変を複雑にし、活性の最適化を困難にしていること、(3) 組換え後にLoxサイトが残存し、編集の精密さを損なう可能性があることです。 研究チームはこれらの課題の一つ一つに取り組み、この技術をさ
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Edited by Michael D. O'Neill

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