生命の基本設計図「細胞周期」を操る、ヒト特有の新しい遺伝子を発見

私たちの体が毎日を健康に過ごすため、体内では一日におよそ3,300億回もの細胞分裂が繰り返されています。この生命活動の根幹をなすのが「細胞周期」と呼ばれる、太古のバクテリアの時代から受け継がれてきた生命の基本ルールです。その原理は「細胞の中身を2倍にして、2つの娘細胞に分裂する」というシンプルなもの。しかし、私たちヒトのような複雑な生物では、この細胞周期はより高度で精巧なものへと進化してきました。ここで一つの疑問が浮かび上がります。それは「進化の過程で比較的最近になって登場した遺伝子は、この生命の根源的なプロセスを制御する上で、どのような役割を果たしているのだろうか?」というものです。 この深遠な問いに、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームが挑み、驚くべき事実を突き止めました。 スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のディディエ・トロノ医学博士(Didier Trono, MD)のグループに所属する二人の科学者、ロマン・フォレー(Romain Forey)とシリル・プルバー(Cyril Pulver)が、この問題の解明に乗り出しました。彼らは細胞周期生物学とゲノミクスを組み合わせ、細胞分裂の過程で遺伝子の働きがどのように変化するのかを調査しました。同僚のアレックス・レデラー(Alex Lederer)と協力し、ヒトの細胞周期における遺伝子活性の詳細なアトラスを作成しました。このアトラスは現在、研究者や一般の人々にも公開されています。研究そのものは、2025年6月23日に『Cell Genomics』誌で発表されました。このオープンアクセスの論文タイトルは「Evolutionarily Recent Transcription Factors Partake in Human Cell Cycle Regulation(進化的に新しい転写因子がヒ
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