VIB-UGentの研究者およびUGent(ゲント大学)、バルセロナ大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の同僚らによる新しい研究によると、これまで乾癬などの皮膚疾患に関連しているとされていた遺伝子変異が、腸の健康にも驚くべき役割を果たしている可能性があることがわかりました。この変異は皮膚の免疫反応を活性化させるだけでなく、腸にも影響を及ぼしています。2025年10月23日にEMBO Molecular Medicine誌で発表されたこの発見は、遺伝学、免疫系、そして腸の間の新たなつながりを明らかにするものであり、治療上の意義を持つ可能性があります。

このオープンアクセス論文のタイトルは「CARD14 Signaling in Intestinal Epithelial Cells Induces Intestinal Inflammation and Intestinal Transit Delay(腸上皮細胞におけるCARD14シグナル伝達は腸の炎症と腸管通過遅延を誘発する)」です。

共同統括著者であり責任著者でもあるインナ・アフォニナ博士(Inna Afonina, PhD)およびルディ・ベヤート博士(Rudi Beyaert, PhD)(VIB-UGent炎症研究センター)率いる科学者たちは、乾癬患者の皮膚免疫反応を活性化させることで知られるCARD14遺伝子の変異が、腸にも影響を与えることを突き止めました。この変異は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を低下させ、軽度の炎症を促進し、細菌感染に対する脆弱性を高めることがわかったのです。

 

皮膚だけではない、腸への影響

研究チームは、ヒトの乾癬に関連するCARD14変異を腸上皮細胞(IECs: Intestinal Epithelial Cells)に発現させたマウスモデルを用いて実験を行いました。その結果、腸の粘膜や腸管神経系に物理的な損傷がないにもかかわらず、これらのマウスでは腸管通過(食べたものが腸を通る速度)が遅くなることが判明しました。このような腸の運動性の変化は、多くの疾患と関連しています。

「私たちの研究は、CARD14の影響が皮膚だけに留まらないことを明らかにしました」と、本研究の筆頭著者であるアイゲリム・アイダロヴァ氏(Aigerim Aidarova)は述べています。「この変異を持つ患者さんの腸内では、目立たないながらも重要な変化が起きており、それが臨床的には診断されないレベルの腸の不調に関与している可能性があります」

 

腸と免疫のクロストーク(相互作用)

さらなる解析により、この変異が腸上皮細胞(IECs)の遺伝子発現プロファイルを変化させていることが示されました。特に、腸の免疫にとって重要な特殊細胞であるパネート細胞が産生する「抗菌ペプチド」の減少が見られました。この抗菌物質の産生低下は、腸内細菌叢の変化とともに、微生物の多様性の減少や、腸内細菌感染への感受性の高まりに関連していました。 

これらの知見は、遺伝的な免疫調節因子と腸機能との間の「クロストーク(相互作用)」についての新たな洞察を提供するものです。また、CARD14変異を持つ乾癬患者は、これまで認識されていなかった問題に直面している可能性があり、それが腸疾患の発症の引き金になるかもしれないことを示唆しています。

「この研究は、たった一つの遺伝子変異が体内の異なる臓器にどのように影響を与えうるかについて、私たちの理解を広げるものです」とベヤート博士は述べています。

また、アフォニナ博士は次のように付け加えます。「これは、腸の炎症や運動障害をさらに研究するための貴重な動物モデルを提供することにもなります」 

この研究は、遺伝学、免疫シグナル伝達、そして消化管の健康の関連性を調査する新たな道を切り開くものであり、将来的な治療への応用が期待されます。また、乾癬患者や皮膚科医の間で、腸疾患の症状に対する意識を高めることが有益であることも示唆しています。

写真:インナ・アフォニナ博士(Inna Afonina, PhD)

[News release] [EMBO Molecular Medicine article]

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